芸能

古今亭菊之丞 腰の煙草入れがこれほどサマになる噺家珍しい

広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が、現代には稀な純和風噺家と評するのが古今亭菊之丞だ。

* * *
落語協会では異例の春風亭一之輔の「一人真打」(来年春)、21世紀になってからは一度だけ例がある。2003年の古今亭菊之丞だ。

菊之丞は1972年生まれ。中学・高校時代に寄席に通いつめて落語家を志し、1991年に古今亭圓菊に入門。二ツ目時代の2002年にNHK新人演芸大賞で落語部門の大賞を受賞したのをきっかけに、翌2003年、席亭(寄席の主人)たちの推薦で、異例の単独真打昇進を果たしている。

歌舞伎の女形を思わせる風貌に、若旦那風の佇まい。「趣味は坂東流の日本舞踊」という菊之丞は、現代には稀な、純和風の噺家だ。高座着の腰にぶら下げた煙草入れがこれほどサマになる人も珍しい。

古風であり純和風だが、老成してはいない。独特の艶っぽさが菊之丞の身上だ。真打になったばかりの頃は、その艶っぽさの中に、未熟ゆえの「あざとさ」も感じられたが、年を経る毎に自然体になってきた。

菊之丞が2010年に出した『こういう了見』という自伝には、「一人真打」がいかに大変だったかをはじめ、落語界内部にいないとわからない苦労の数々が赤裸々に書かれていて興味深いが、その本で彼は「落語は惚れ抜いたいい女」だといっている。

冷たくされることも、裏切られることもある。いつも「こんなに好きなのに」と悩まされている。それでも一生、惚れ続ける、と。

その了見がある限り、いつの日か菊之丞は「古今亭のホープ」に相応しい独自の魅力を確立し、大きく飛躍することだろう。

※週刊ポスト2011年10月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン