ライフ

原発下請け作業の子請け、孫請け 一つ下がると日当5000円減

福島第1原発では、冷温停止状態から事故収束宣言に至り、事態は沈静化したかのように語られる。しかし現場では、今も多くの作業員が目に見えない放射能と闘っている。震災の直後から被災地を取材し続けている産経新聞東北総局の荒船清太氏が、リアルタイムで働く作業員たちの実像に迫る。

* * *
作業員たちが暮らす民宿のテーブルで酒盛りが始まっていた。常備してある4リットルの甲類焼酎「鏡月」の水割りを、神奈川県から来た4人組が酌み交わす。

「おまえが一番動いている。でも、一番仕事が遅いんだ」。今日は説教モードのようだ。リーダー(30歳)が、入社して2年目の若手(29歳)を諭している。

「原発は、事故もない一番安全な現場だった。それが今は……」。リーダーは震災前にも原発での作業経験がある。

若手も最初は放射能に戸惑ったが、先輩を信じ、娯楽のない場所にテレビゲーム機を持ってやってきた。休日は趣味のバイクで県内を走るだけ。つい先日、津波で土台だけとなったかつての住宅街に足を向け、言葉を失って帰ってきた。そんな積極性も、先輩の前ではたじたじだ。

「俺だって、一人じゃなんもできない。みんながいるから仕事を自慢できるんだ」

説教は終盤。リーダーの言葉に周りはうなずき、若手が「ありがとうございます」。「じゃ、飲みに行くか!」行き着く先は、駅前のスナック街だ。

年の瀬も迫った週末。駅前のスナックは帰郷を目前にした原発作業員らでにぎわう。この日はどこに入っても満席。目当ての店は「ケンカをされる方はちょっと……」と断わられた。「作業員同士でケンカとか起きたりしてるらしくてさ」とリーダーはふて腐れた。

作業員もいいことばかりではない。「近頃は、手当がだいぶ減ってきた」とベテランが話す。

スナックで一杯だけ飲んでの帰り道、リーダーは、一緒に来ていた親請けの50代作業員に向かって叫んだ。

「イチキュー(日当1万9000円)でいいからさ、俺たちを雇ってくんねえか!」

リーダーの会社は孫請けのさらに下。元請け、子請け、孫請け下になればなるほど、手当も給料も減っていく。「構造はどこに行っても変わらねえんだよ」とリーダー。「一つ下に変わるだけで、日当で5000円くらい違うんじゃねえかな」。親請けの作業員は、そう言いながらも、雇い直しには言及しなかった。

※SAPIO2012年2月1・8日号

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン