【書評】『降霊会の夜』(浅田次郎/朝日新聞出版/1575円)
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17歳の〈メアリー・ジョーンズの指先がひとしきり震えたと思うと、その唇から野太い日本語が迸り出た。(中略)卑怯者!〉。老齢にさしかかった“私”は、高原の別荘に迷い込んだ女性に誘われて「降霊会」に臨むことになった。
そこで入れ替わり現われる死者たちが語る“真実”に耳を傾けるにつれ、葬ったはずの記憶がすり替わっていく……。この国の高度成長期を敷衍しつつ、魂の真の救済とは何かを、流麗な筆致で綴る傑作長編。
※週刊ポスト2012年4月6日号