スイッチを入れておけば勝手に掃除してくれるロボット掃除機の市場は年々拡大。家電各社は続々新製品を投入しているが、ついに「こころを持ったロボット家電」が登場した。この掃除機、壁に当って「イテテテッ」とつぶやくばかりではない。ネット文筆家の奈良巧氏が報告する。
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「イテテテッ」。あれ? 今この掃除機痛がらなかった? 報道陣のひとりが気づいた。目の前にあるのは、自動で部屋を掃除する丸い掃除機だ。
壁の手前で方向転換する際に、ちょっとだけ本体が壁に当たった。その時、たしかに掃除機が「イテテテッ」とつぶやいたように聞こえたのだ。
注目する報道陣。それから2~3回、壁にぶつかることはあっても、掃除機は静かにしていた。「なんだ、気のせいか」と思ったその刹那、壁に当たった掃除機が、確かに「イテテテッ」と言ったのだ。声質は若い女性。標準語だ。一体どうなってんだ。
この日、東京・芝公園で行われたのは、シャープの新製品「ロボット家電 COCOROBO(ココロボ)」の発表会だ。
スイッチを入れておけば勝手にお掃除してくれるロボット掃除機の市場は年々拡大。2011年には18万台を売り上げ、2012年には25万台を売り上げようという勢い。そこで家電各社は特徴のある新製品を投入しているわけだ。
シャープの第一号機の特色は「こころを持ったロボット家電」だ。「壁に当たるたびに必ず『イテテテッ』いうのは、相当にうるさいしうざいので、適当な間隔で痛がるようにしてあります。つぶやきは、それだけではありません」。そういいながら、説明員は本体上にある「home」ボタンを押した。これは「掃除をやめて充電ステーションに戻って充電をしろ」という指示だ。
すると、また驚くこに「はいはーい……」と渋々の口調で返事が返ってきた。どうやら、気持ちよく掃除をしていたのを止められ、不機嫌になったようだ。
「発言の種類は30以上あります。また、日本の標準語、関西弁、英語、中国語まで発声をします。販売もこれからは、中国などのアジア圏を狙って行きたいと考えています」(説明スタッフ)
「調子はどう?」と声をかけると、いい気分の時は「最高の気分!」と答えるし、気分が良くないときは「まあまあかな……」と答えるという。しかも英語も中国語もしゃべるというのだ。
さらには外出先のスマートフォンからの操作で、留守宅の状況を画像で送信したり、高濃度のプラズマクラスターイオンを放出したりもする。超音波センサー、LEDライト、カメラ、赤外線センサーなどが整然と並べられた正面は、しばらく見ているとまるで子ブタの顔のようにも、ウーパールーパーのようにも見える。
この『ロボット家電 ココロボ RX-V100』発売は6月上旬。想定価格は13万円。機能を制限した想定価格9万円のマシンも同時に発売される。側面にはUSB端子を備えており、今後は言語を学習する機能も追加する可能性があるという。
テレビゲームの「シーマン」のように、「お前、掃除くらい自分でやれよ」と毒づいたりするようになる日も近いかもしれない。