国内

人気の期間限定「北海道版からあげクン」 地元と味が違う理由

大人気のからあげクン「北海道ザンギ(醤油味)」(期間限定)

 大手コンビニで期間限定で登場した北海道の鳥からあげ「ザンギ」が、発売初日の「からあげクン」販売実績で、過去26年間でトップになつた。醤油ベースにニンニクがっつり入れの独特の味わいが人気の理由だが、意外にも発祥地と言われる釧路のザンギとは似ても似つかぬものだった。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏がレポートする。

*   *   *
 大手コンビニ、ローソンの定番のホットスナック「からあげクン」に期間限定で「北海道ザンギ(醤油味)」が登場した。発売初日の販売実績が、「からあげクン」26年の歴史で歴代No.1になったという。

 先日釧路に出張する機会があった。釧路と言えば北海道における「ザンギ」(鳥のからあげ)の発祥地とも言われる。ところが釧路で食べたそのザンギに驚いた。それまで僕が思い込んでいた、ザンギとは違う味つけだった。

 一般に北海道での「ザンギ」と言えば、しょうゆベースの甘めのタレにニンニクやショウガのすり下ろしを加え、「しょうゆダレ」を作る。そのタレに鶏肉をしっかり漬け込んだ後に片栗粉や、場合によっては卵を加えた衣をつけて揚げたものというイメージだった。

 実際、北海道出身の知人、数人に聞いたところ、多少の違いこそあれ、ザンギには「しょうゆベースのタレ」に「ニンニクをがっつり入れ」、「漬け込む」という共通項があった。「からあげは?」と聞くと「ちょっと違う。もう少し味が穏やか」とか「からあげは衣に味つけ、ザンギは肉にしっかり下味がついている」など、ザンギとからあげは違うものと認識していた。だが、明確な線は引かれていない。

 なのに「発祥地」「本場」と言われる釧路で口にしたザンギは違っていた。釧路ザンギの「発祥店」として知られる、昭和35年創業の『鳥松』、ほか初代『鳥松』店主の一番弟子でその後独立したという『鳥善』、昨年夏にオープンした新規参入組の『大ちゃん本舗』、釧路にある3軒のザンギ専門店がことごとく、前出の条件を満たしていないのだ。

 「釧路のザンギ専門店は、いずれも塩で下味をつけ、でんぷん(片栗粉)をはたく。ラードで揚げ、店独自のソースをつけて食べるというスタイル」(『からあげ文化論考』~みんなのからあげ文化研究所)

 釧路でも、専門店以外の食堂や居酒屋などでは、しょうゆ味をベースにしたザンギを供する店も多い。家庭でも、一般的には「醤油味」一方、昭和20年代に開業し、いまも塩味ベースのザンギをメニューに載せる店もあった。およそ60年間、厨房に立ち続ける『みなと食堂』の店主に話を聞いた。

「えっ!? うちが元祖かって? あっはっはっは! 違うよ。うちの店では最初から、ザンギを出していたわけじゃないんだ。昭和30年代中頃かな。『鳥松』ができて、よく子どもたちを食べに連れて行ってたの。あそこのザンギがおいしくてね。『こういうの、出したいな』と思って通い詰めた。だからうちの味の土台は『鳥松』なんだよ」

 確かに『みなと食堂』のザンギも、味のベースは塩。おろしショウガを揉み込み、衣には「でんぷん」が使われている。北海道で「醤油味」『鳥松』の当代や『鳥善』はじめ、釧路の専門店と似た味わいがある。

 一般的には「醤油味」が多いとされる「ザンギ」だが、釧路の味は「塩」である。すべての国民食には、地域の数だけ、家庭の数だけ、味わいがある。味噌汁、おにぎり、カレー、ラーメン……。北海道においての「ザンギ」はもとより、全国的にその多様性が認知されつつある「からあげ」もいま、本当の「国民食」になりつつあると言えるのかもしれない。

関連記事

トピックス

山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(Facebook /時事通信フォト)
脳、眼球、咽頭が摘出、体重は20キロ台…“激しい拷問”受けたウクライナ人女性記者の葬儀を覆った“深い悲しみと怒り”「大行列ができ軍人が『ビクトリアに栄光あれ!』と…」
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン