みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、骨董コレクターの死について考える。
* * *
コレクターは、病気になったり、ある年齢を越えたら所蔵品の行く末を考えるらしい。愛着のある品物を少しずつ売っていくという人もいるくらいだ。「お宝」とは無縁の私だが、なんとなくその心境はわかる。
40年に亘って骨董収集をしたあるコレクターは、まだ元気なうちに所蔵品のリストを作成してなじみの古美術商に鑑定を依頼した。評価額は2億数千万円。息子さんの了承を得て、いくつかの美術資料館や博物館に膨大なコレクションを寄贈したという。
「長年収集していた目利きのコレクションは価値があることもあります。この人の場合は、生前に寄贈したので結果的に無税でした。何もせずに亡くなっていたら“お宝”は相続税の対象になっていました」
“骨董は店を買う(骨董は、モノを買うのではなく、人を買う)”という格言が業界にはあるという。一流のコレクターは、必ず一流の古美術商と懇意にしているそうだ。そういう人はたいてい、「死に方」も上手といえそうだ。
※週刊ポスト2012年10月12日号