ビジネス

人民元投資 高金利ではないが切り上げ期待大でリスク少ない

 6月1日から、円と人民元の直接取引がスタートした。実際は、三菱東京UFJ銀行などの国内のメガバンク3行と、中国の大手銀行との銀行間取引である。これを受けて、さまざまな金融機関が、個人向けとなる人民元建て外貨預金やFX(外国為替証拠金取引)を提供し始めている。そこで、ファイナンシャル・プランナーの松岡賢治氏が人民元投資のメリットを解説する。

 * * *
 人民元投資というと、「今までにも人民元建ての外貨預金やFXはあったはずでは?」と思う人も多いかもしれない。たしかに、一部のネット銀行やFX会社での取り扱いはあった。しかし、そうした商品で取引されている人民元と、この6月から直接取引の対象となった人民元とは別物なのである。

 6月以前に取引の対象となっていたのは、「ノンデリバラブル・フォワード」(NDF)と呼ばれる人民元。これは中国国内の居住者や企業が使っている人民元である「CNY」に連動する、いわば仮想的な人民元である。

 当然、取引量は極端に少ないため、売買のスプレッドは広く、取引コストがかかる。そのため、日本と中国では金利差があるにもかかわらず(日本<中国)、円を売って人民元(NDF)を買っても、スワップ金利はマイナスとなっていた。これでは、人民元をFXで売買するうま味は少ない。

 一方、6月から解禁となった人民元は「CNH」と呼ばれる。オフショア市場で取引される人民元のことで、中国国内に居住していない非居住者でも売買ができる人民元だ(「CNH」のオフショア市場とは具体的には香港を指す。「CNH」の「H」は香港の頭文字である)。

「CNH」は、中国との貿易をしている企業も取引に参加しているため、日々の売買高は「NDF」よりもはるかに多い。500億円に達する日もあるようだ。流動性が高まるにつれ売買スプレッドも狭くなっており、「CNH」を扱っているセントラル短資FXの場合、8月は3銭程度でのスプレッドとなっている。

 その結果、円売り/人民元買いのポジションを持てば、金利差を反映したスワップ金利が得られ、8月中旬時点では1万通貨で9円、つまり0.9%の金利となっている(同じくセントラル短資FXのスワップレート)。また、KaKaKu FXでは、米ドルとCNHが直接取引できる。

 三井住友銀行やじぶん銀行では、「CNH」建ての外貨預金を取り扱っている。ホームページ上で金利などが確認可能なじぶん銀行では、人民元建て外貨普通預金金利は0.1%となっている(9月10日時点)。

 金利的には、現状それほどの魅力はない人民元投資だが、金融市場の人民元に対する通貨切り上げに期待は大きい。短期的に大幅な切り上げが行なわれる可能性は低いが、中長期的には、じょじょに切り上げられていく可能性はある。

 今年3月以降は全世界的な円高傾向を受けて、対円での人民元安が続いているが、今後も中国の中長期的な経済成長を見込むならば、外貨資産の一部に組み入れても良いだろう。現在の停滞期を脱し、再び高成長軌道に戻るのであれば、金利の上昇も想定され、高金利が復活する可能性もある。

 リスクとしては、通常の為替変動リスクに加え、中国が通貨政策を変えて取引規制を強めることが考えられる。しかし、中国政府は人民元の国際化を明言しており、政策リスクは低いだろう。

※マネーポスト2012年秋号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン