最近、自分の名前をグーグルなどのインターネットサイトで検索して、自分に対する評判を確かめる「エゴサーチ」を行なう人が増えている。自己愛は誰もが持つものだが、それが強烈過ぎるとトラブルの原因にもなる。
だが目立ちたがりばかりが「病的に自分が好きな人」ではない。本音で話ができる友達がいないという人、草食系に代表される恋愛ができない人……。このような人たちの心理にもまた過剰な自己愛が潜んでいる。
『病的に自分が好きな人』(幻冬舎新書)の著者で心理学博士の榎本博明氏はこう語る。「人間は心理的距離が縮まると遠慮がなくなり、そのぶん衝突も増える。彼らはその経験がトラウマとなって、これ以上近づいたら嫌われるのではないかと思う“見捨てられ不安”に駆られ、深く付き合うことができないのです」
不安やコンプレックスの裏返しなのであれば、その不安を取り除いてあげればいい。そう考えて近づいても、逆に痛い目を見る。
Aさん(40代・製薬会社)は、「人付き合いがヘタな自分が嫌い。このままではダメだ」と自嘲気味にいう同僚から相談を受けた。ここはいいにくいこともいったほうが親切だと思い、率直に思うことをいうと、「アイツに悪口をいわれて傷ついた」と会社中に触れ回られたという。
「彼らはアドバイスを求めていません。否定的な意見などはもってのほか。どんなに自嘲的なことをいっても、あくまで自分が好きなので、自分を変えるつもりはない。“そんなことないよ”と自嘲を否定してほしいだけなのです。もし、否定的なことをいわれたら、防衛本能が刺激され、攻撃行動に出ることもある。
彼らへの対処法は、基本的に“距離をおいて付き合う”。これしかない」(榎本氏)
とはいえ、職場ではそうもいっていられない。榎本氏が病的に自分が好きな部下と上司、それぞれの対応策について解説する。
「部下に対しては承認欲求を満たしてあげましょう。『発想がユニーク』や『ネットの検索が早い』とか、何でもいいので強みを見つけて褒めてやり、役割意識を与えたり期待を示すこと。彼らは無自覚な不安心理を抱えているので、それを刺激せず、自信を持たせるように努めるのです。
一方、部下は上司を選べませんから、こちらの精神を保つために“読み替え力”を身に付ける。ワガママな上司なら、『不安が強いから虚勢を張っている。かわいそう』と読み替える。とにかく自分が傷つかないよう、心のコントロールをすること。自己愛にあふれる上司とまともに付き合っていては自分がもちません」
自己愛過剰になりがちな現代社会。あなたはどうか。
※週刊ポスト2012年10月26日号