医療の分野では、どんな病気であれ患者がいる限りは、より効果の高い治療法の開発が求められるのが常である。それは「うつ病」や「不眠症」でも例外ではない。重度のうつ病に対して有効性が高いのが、修正型電気けいれん療法である。昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンターの吉益晴夫准教授は、こう解説する。
「この治療法は患者さんに苦痛はありません。電気を感じることもなく、副作用も少ない。重度のうつ病治療では一番良い方法のひとつだと思います」
昭和大学横浜市北部病院で、2011年に施術を受けた患者のうち半数がうつ病の患者。他には双極性障害、統合失調症などの患者も対象になる。
「当院では手術室ではなく処置室で治療を行ないます。担当の精神科医のほか麻酔科医1~2名、看護師は2~3名の体制で行ないます」
患者は、仰向けの状態で点滴を受けながらストレッチャーで処置室へ運ばれてくる。両方のこめかみに電極が貼られるほか、頭や胸、脚部にも心電図、筋電図、脳波を測定する電極がセットされ、全身麻酔で眠ったのち、筋弛緩薬を投与される。筋弛緩薬を投与するのは、電気刺激によるけいれんで骨折や脱臼がおこることを防ぐためである。
「通電は5秒。けいれんしなかったり、規定の秒数に満たない場合、少し時間をあけて再度試みますが、通算で3回以上の通電は行ないません」
治療は15分程度。週に2~3回のペースで施術し、トータル6~12回続ける。
「当院では患者さんの88%で改善がみられました。5~6回目くらいから、スッキリしたという患者さんが目立ち始め、動けなかった人が歩いたり、拒絶的な面が減少する、食欲が出てくるといった顕著な例もあります。治療費は1回3万円ですが、健康保険がききますから、患者さんの負担は3割あるいは1割になります」
※週刊ポスト2012年11月9日号