西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、犬にとって迷惑な行動について解説する。
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かつてイベントで、犬のしつけの相談コーナーを頼まれたときのお話。
相談コーナーの前の通路、左から現れたるはフレンチブルドッグを従えたる若き女性、そこへ犬好きらしき若き女性が、右から登場。フレンチブルドッグを発見したる女性は、「きゃーっ、カッワイイ」と大声を発し、犬に走り寄り、覆い被さるように顔を近づけた。
次の瞬間、再び「きゃーっ」。
同じ「きゃーっ」でも、今度は悲鳴。なんと、顔を近づけた女性、顔面をカプっとされ、額からタラーリと一筋の血を。コレ、私めとしては、咬まれた女性の方に問題があるとするわけですが、さて、この女性のどこが悪かったのか?
犬好きの人がやりがちで、犬からすると迷惑な行動ってのがある。大きな声を出す、急に動く、いきなり触る、覆い被さる、ガン見する、真正面から近づく、頭を撫でる、顔を近づける。これら、みーんな、やってはイケナイ。特に初対面の犬や、恐がりな犬には。
やられた犬の方は、大きなストレスを感じる。そんなときはストレスをかけてくる相手から離れる、またはその相手を遠ざけようとする。しかし、リードをつけられ、前者の選択肢を取れない犬は、必然的に後者の行動を取るしかない。「そんなに近づかないで、あっち行ってよ」ってね。
そんなとき、人間は、手で相手を押しやる。人間の手に変わるのは、犬の場合は口。結果、歯が当たる。歯を当てられた方は、血が出る。
犬と触れあいたかったら、「触ってもいいですか?」の一言を忘れないこと。飼い主から「いいですよ」と言われても、やってはイケナイことは、やってはイケナイ。
犬にストレスをかけないためにも、咬まれないためにも、ね。
※週刊ポスト2012年11月9日号