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経年劣化危惧される首都高 約10万箇所が補修必要の可能性

 換気用ダクトを仕切る天井板が崩落し、9人もの犠牲者を出す大惨事を招いてしまった中央自動車道・笹子トンネル。重さ1トンもの天井板は天井から金具で吊り下げられ、ボルトで固定されていたという。防災システム研究所の山村武彦所長はこう分析する。

「問題なのは、経年劣化です。笹子トンネルでは定期的に点検が行われ、異常がないことを確認していたと説明していますが、三十数年もの間、ボルト1本交換していません。通常、トンネルや道路の耐用年数は60~70年といわれていますが、ボルトや金物の耐用年数はだいたい30年が目安です。

 さらに、笹子トンネルのような主要な交通トンネルは車の通行量も多く、振動も激しい。結果、ボルトの振動が頻繁に起こり、経年劣化だけでなく金属疲労も起こしてしまいます」

 総務省のデータによると、全国にあるトンネル8534か所のうち、築20年以上のものは約46%、築50年以上のものも約18%も存在する。つまり、つり天井式のトンネルでなくとも、「死を呼ぶトンネル」が少なからず存在するのだ。

 トンネルだけではない。都内を走る首都高速道路も経年劣化が危惧されている。1962年に開通した首都高は、全長301kmのうち、およそ4割となる140kmが、建築から30年以上経っている。補修が必要な場所は9万7000箇所にも及ぶという。

 早急に補修工事や建て替え工事が必要となるが、予算的にも、あるいは作業的にも簡単なことではない。

『朽ちるインフラ─忍び寄るもうひとつの危機』(日本経済新聞出版社)の著者・東洋大学経済学部の根本祐二教授が警告する。

「現在、補修の必要が迫られているインフラはトンネルや道路だけではありません。多くの橋や上下水道、学校や役場、公民館、ニュータウンに建てられたマンションなどは、高度経済成長時代に一斉に建てられ、それが同時に今、危険な状態になってきています。

 しかも、大量にインフラが更新期を迎えているにもかかわらず、その補修に使うことができる予算は、増えるどころか減ってきている状況にあるんです。このまま何もしなければ、橋は落ちてしまうし、体育館や文化ホールなどの天井が落ちてしまうといった事故の危険がどんどん高まってくるでしょう。首都高も橋と同じ構造なので、倒壊のリスクは少なくありません」

※女性セブン2012年12月20日号

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