ライフ

ドイツの教師 校外で煙草吸う生徒目撃しても注意しない理由

 大阪市立桜宮高校に端を発した体罰問題が広がり続けている。学校教育の体罰について、ドイツの例を参考に考えたい。(取材・執筆=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 体罰問題を高校野球の監督をしている友人と話していて、彼が自分のこんなエピソードを紹介してくれた。

 若くして母校の監督に就任して初めて選手の保護者会があったときのこと。リトルリーグの監督もしているという保護者からこんな指摘を受けた。

「私がグラウンドに来ても誰も選手が挨拶をしない。どういう指導をされているのか」

 友人は答えた。

「挨拶といった基本的なシツケは家庭でお願いします」

 私は「よく言い返した」と思ったが、保護者会では「シラーとした雰囲気が漂った」という。

 体罰問題が繰り返されで跡を絶たないのは、子どもの教育をなんでも学校に委ねる風潮も、土壌にあるのはではないか。

「ドイツでは校門から一歩出れば学校の管轄外。煙草を吸っている生徒を目撃しても教師は注意しません」

 というのは日独ハーフで「生きる力をつけるドイツ流子育てのすすめ」の著者、サンドラ・ヘフェリンさん。ドイツで義務教育を過ごしたサンドラさんは、1度も体罰を受けたことも目撃したこともないという。

「ドイツでは遅くとも1980年代前半には、体罰が法律で完全に禁止されていました。基本、子供の生活態度の管理をする担当は学校ではない、というのがドイツの共通したスタンスです」

 サンドラさんによると、ドイツで「問題行為」(授業中に騒ぐなどの行為。髪の毛を染めるような身だしなみや学校外で起こした問題ではない)を起こした生徒には、まず「口頭」で注意される。その「注意」が3回たまると、校長から生徒の家に「問題行動を起こしたことへの注意」が書面で送られる。そしてこの書面が3通たまったら退学、という。

「ドイツでは教師の家庭訪問もありません。学校と家庭は厳格に区別されています」(サンドラさん)

 他国のやり方が日本にそのまま適用できるとは思わない。しかし体罰問題を掘り下げていくと「学校教育と家庭教育の峻別」に行き着くのではないか。学校外で生徒を指導してくれる教師を私たちは「面倒見の良い先生」と賞賛してきた。それは教師に本来親がすべきことを押しつけたことにならないか。学校や教師の責任を非難するだけでなく、家庭を含めた私たちの教育観を問い直すべき時期に来ている。

 冒頭の高校野球の監督をしている友人に「体罰をしたことがあるか」と訊ねると、

「あのな、野球が下手なぐらいで人を殴れるか」

 と苦笑した。

関連記事

トピックス

小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
女性アイドルグループ・道玄坂69
女性アイドルグループ「道玄坂69」がメンバーの性被害を告発 “薬物のようなものを使用”加害者とされる有名ナンパ師が反論
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン