プロ野球シーズン間近だが、シーズン開幕を神聖な気持ちで迎えるのは、なにも選手や監督だけではない。1年フルシーズン、球団とともに過ごす報道陣も立場は同じである。
「あるスポーツ新聞では記者たちに、開幕日と日本シリーズの初日だけはネクタイの着用を指導していますし、毎年の開幕直前には、デスクが担当者に真新しいスコアブックを手渡しながら、訓示を行なう社もあります」(スポーツ紙記者)
今年の開幕戦を観に行く人は、ぜひ開場すぐに球場へ行ってみてほしい。そこには、シーズン中はポロシャツにチノパンといったラフな格好で取材している記者が、この日ばかりはネクタイ、背広で礼を尽くしている姿が見られる。開幕日は記者にとっても特別な一日なのである。
開幕を告げる球場も、いつもとは違うムードが漂う。選手用通路には、関係各所から届けられたスタンド花が所狭しと並び、華やかさを演出している。 試合を支えるスタッフたちも、いつもとは違う空気でこの日を迎える。
例えばグラウンドキーパーは、ホームチームの先発投手に合わせてマウンドの形状を調整するのが常。開幕の日の作業に使う水に、わざわざ「お清め」を行ない、それを使って作業した球場もあったという。
当然、試合をジャッジする審判団にも同じ緊張感が漂う。ことに開幕試合を仕切るプレートアンパイアは名誉の任。セ・リーグ審判を長く務めた故・田中俊幸氏は、
「開幕が近づくと、家の中にいても愛犬が近寄ってこなくなる。それだけ、こちらがいつもとは違う緊張感、気配を発していたんだと思います」と生前語っていた。
昨季、就任1年目の栗山英樹監督は、開幕戦の試合開始前に選手、スタッフの全員を集合させ、それぞれに1個の杯を持たせた。
「杯には“夢は正夢”という文字がプリントされており、これで水盃を交わした。この儀式でチームに一体感が生まれ、開幕戦でも初勝利。その勢いで走り始め、リーグ優勝まで辿り着きました」(日本ハム担当記者)
今年のプロ野球。どのチームがどんな形で開幕を迎え、どこが優勝の二文字を手にするのか。 いよいよ開幕である。
※週刊ポスト2013年4月5日号