彼女がいつもいる高さ1mのがっしりとしたカウンターは、途中で檜材の大黒柱と交差しながら入り口から奥へ続いている。
「おかあさん(創業者夫人)が、故郷の鳳来(現在の愛知県新城市)からわざわざ取り寄せて建てたもので、とても存在感があります」(久代さん)
そしてその大黒柱のあたりから平行してカウンター風テーブルが続く。30人が同時に飲めるかなりの広さがあるが、
「落ち着かない広さではなくて、細長い空間になっているので、安心できる狭さを感じています。テーブルでは友人と向き合い、背中合わせでこの店のファンが飲んでいる。何も構えず無防備で味わえる酒とつまみ。そりゃあ最高にうまいです」(50代公務員)
看板娘に並んで、この店の名物が、そのつまみだ。久代さんの義妹にあたる明子さん(72)が、店の奥の厨房(というか、斉藤家の台所)で拵えている。常連客は皆、「豊橋の三ツ星」と称えているほど。