西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、犬には歯磨きが必要なのかについて解説する。
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11月8日って、何の日か知ってます? いいパ~だから、賢いアホの日、んなわけはない。正解は、いい歯の日。
て~ことで今回は犬の歯みがきのお話。えっ、昔は犬に歯みがきなんかしなかったぞ、って確かにそう。昔はそれで良かった。
甘い物を食べないとか、デンプンを糖に分解する酵素がだ液にないとか、口の中が酸性になりにくいとか、様々な理由で基本的に犬は虫歯にならない。だから、虫歯予防のための歯みがきは必要ない。
ところが、口の中が酸性になりにくいってのは、唾液中のアルカリ成分のカルシウムイオンなどが歯垢を石灰化しやすく、歯石が付きやすい。なんでも人間の5倍以上の速さで、歯石が付いてくっていう。当然、歯周病になりやすい。犬の歯みがきは、この歯周病予防のために必要、ってこと。
ご存じのように、歯周病ってのは怖いもんで、人間も同じだけど、内臓疾患をはじめ、いろ~んな病気の元となる。
歯石なんてとってもらえばいい、と心の中で今つぶやいたご貴兄、犬の場合はですな、歯石を取るのにも全身麻酔なんですわ。で、高齢になるほどリスクが高くなって、場合によっては麻酔がかけられないが故に治療ができず、結果、手のほどこしようがなく、お亡くなりになるなんてこともある。
歯みがきしてない犬の多くは8歳頃に、深刻な症状に悩まされる。今や犬の平均寿命は14歳弱だけど、10年前の犬の平均寿命は8歳程度。すなわち昔は、全身麻酔で治療をしなくっちゃ、って頃に犬はお亡くなりになってくれてた。だから、歯みがきの必要性を感じなかった、ってそれだけのこと。
※週刊ポスト2013年11月22日号