2週続けて首都圏に降り積もった大雪。特に2月9日は都心で最大27cmを記録する45年ぶりの大雪となった。
週末ということもあって、自宅にいた都民が多く、家の周りや商店街、駅前など各所で慣れない雪かきに追われた。そこで見えてきたのは、人々の人間模様だった。
幅50cm──人ひとり歩ければとりあえずは十分だ。朝7時から金属製ショベルを手に雪かきを始めた。玄関前から始めて、駐車場前へ。昨夜のうちに、車のワイパーを上げておいたのは正解だった。
少しすると一軒向こう隣の奥さんが長靴姿で顔を見せる。
「大変ですねー」
あちらの奥さん、雪かき専門のプラスチック製ショベルに、よけた雪を運ぶソリまで持っている。用意周到だなァ。でもうらやんでも仕方ない。
重くてツライが金属製でとにかく進める。20分もするとかなり腰に来る。休み休みで1時間過ぎ、お互い自分の“敷地内”を終えた頃、その奥さんと、はたと目があった。
(どうしましょうか……)。挟まれた家の人が待てど暮らせど雪かきに現われないのだ。時間は朝9時をまわっている。高齢の一家ではなく40代夫婦、高校生の一人娘の3人家族だ。家の中には人の気配もある──。
いまだ雪かきの筋肉痛が続いているというこの50代男性は、深いため息をもらした。
「雪かきは自分の家の前だけやっても意味がない。みんながそれぞれの持ち場を行なってはじめて道ができるわけです。もちろん強制じゃないですが、なぜやらずにいられるのか。結局お隣さんは出てこないままでした。たかが雪かき、されど雪かき。これからの近所付き合いを考えさせられましたよ……」
ショベルさえ持たない家も多かった。大雪特需に、前日には各地のホームセンターで完売御礼。9日に探し回っても入手は困難な状況だった。
とある住宅街ではお風呂の残り湯をタンクにつめて必死に往復する父親の姿も見られた。園芸用スコップで雪を崩して足でズズッと移動させ、必死に雪かきをしていた人もいる。
「気の毒になってね、自宅周りがある程度終わった時に、貸してあげたんです。とても感謝されました。
ただ、ショベルを貸してあげてしばらくして外へ出ると、これくらいならいいだろうとやり残してあったウチの雪もすべてやってあった。かえって気を遣わせてしまいました。貸すことひとつでも難しいと思いました(笑い)。
でも、ウチの周りは新興住宅街であまりご近所さんと付き合いがなかったので交流ができるいい機会になりました」(世田谷区・40代男性)
※週刊ポスト2014年2月28日号