――それがやる気につながるということですね。
坪田:上司が信頼してくれていると思うことができれば、部下も上司を信頼できるわけですよね。それも“好意の返報性”のひとつです。
――新入社員に対しては、今の若者は叱るとすぐ落ち込んで軟弱だとか昔はもっと厳しかったなどと言いがち。叱るのではなくて、褒めてあげるほうが効果的?
坪田:短期的に見るなら、どちらも変わらないと思います。叱ったら、部下は「はい!」と即座に動きますから。でも、しょっちゅう怒鳴っていると短期的にはすぐ動いてくれても、長期的には“あの上司は苦手”となり、上司が発する情報も拒絶するようになるので、聞いたことが頭に入らず、どんどんポカをやる部下になってしまう。しかも勝手にやると怒鳴られると思って、いちいち指示を仰がないと動けなくなる。
一方、長期的に見るならメリットが大きいのは叱らないほうです。最初に部下との信頼関係を築いて育成に力を注げば、それからあとは彼らが能動的にやってくれます。
――他に気をつけるべきポイントは?
坪田:指導する時には、『やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ』がポイントです。これを気をつけるだけでガラリと変わります。「ビジュアル化」してあげることです。口で言うだけでは相手にイメージが湧かないので、その人の経験や常識によっては意図が全く伝わっていないことも。まず自分が先にやり方を見せた上で、ポイントを言って聞かせて、やってごらんと言うほうが相手もわかる。それをひとりでやらせてみて、できたら褒める、もっとやらせるというサイクルを作ることが大切です。
――部下を伸ばすには、厳しくしないほうがいいんですね。
坪田:自分の価値観を押しつけないほうがいいですね。叱られている状態では委縮して能力も活かされません。前提として信頼関係がなければいけませんが。だから信頼関係を築く最初の3か月は手間がかかります。それができていれば、叱ろうが言葉足らずでもあまり大きな問題ではない。あ・うんの呼吸になってきます。いざという時でも、部下はちゃんと力を発揮して乗りきってくれますよ。
【坪田信貴(つぼた・のぶたか)】
愛知県名古屋市にある青藍義塾代表取締役・塾長。IT企業など複数社の経営者、企業家でもある。TOEICは990点(満点)でネイティブ並みの英会話力を持つ。海外留学中に学んだ心理学を駆使した学習指導法により、生徒の偏差値を短期間で急激に上げることに定評がある。教え子には「偏差値40から東京大学に合格」「学年ビリから医学部進学」など異例のエピソード多数。夢は「世界的に有名になった教え子達の自伝に名前が載ること」。