坂元の呼びかけもあり、徐々に協力態勢が整ってきた。そこでキャビアの加工法を探るため、有志が水産試験場の職員とともにフランスなどで視察を行なった。だが加工法は極秘。みな堅く口を閉ざすばかりだった。
持ち帰ったのは断片的な情報だけ。それを元に試験場が中心となって加工法が模索され、試作品作りが行なわれた。なんとか形になったキャビアを地元・宮崎出身のフレンチシェフに試食してもらったところ……。
「それなりには美味しい。でも、全体的なクオリティーは本場ものにはほど遠い」
クオリティーを高めるためには何が必要なのか──。さらに試作品作りが繰り返された。その数は、じつに2000以上にのぼった。
2013年、協議会が協同組合に発展すると坂元は長年勤めた会社を辞め、事務局長として専念する決意をした。
「妻には猛反対されると覚悟していました。ところが、『なんとかなるでしょ。一緒に頑張りましょう!』といってくれたのです。なにがなんでも宮崎産キャビアを全国に広めてやる──そう決意しました」
時を同じくして、試験場ではある加工法にたどりついていた。口の中で広がる豊満な味わいは試食した坂元も納得のいくものだった。
「カギは“熟成”でした。詳細は極秘ですが(笑い)」
2013年11月22日、30余年にわたる研究に敬意を表し『宮崎キャビア1983』と名付けられた宮崎産キャビアは、発売されるやバックオーダーを抱えるほど好評を博した。
「じつはシロチョウザメは、肉も美味しいのです。ヨーロッパでは“ロイヤルフィッシュ”と呼ばれる高級食材。日本でも“食べても美味しい魚”と認知されるようPRしていきます」
(文中敬称略)
■取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2014年3月14日号