日本銀行の幹部職員が1300円の新刊本を万引きして逮捕されたことが、金融関係者ならびに霞が関の官僚たちの間で大きな話題となっている。この事件を報じた『週刊文春』(7月16日発売号)によると、7月上旬、都内の書店で日銀幹部のA氏(53歳)が『日本人を縛りつける役人の掟 「岩盤規制」を打ち破れ!』(原英史氏著・小学館)を万引き。容疑を否認したため、その場で逮捕。数日後にようやく容疑を認め、釈放されたという。
同誌によると、A氏は日本銀行の北海道の一部エリアを管轄する事務所長という要職にあったというが、“万引きしてまで読みたい”と思った「役人批判本」とはいかなるものなのか。
同書の著者である原英史氏は、東京大学法学部卒業、米シカゴ大学院を終了後、1989年に通商産業省に入省。2007年に規制改革担当大臣補佐官となり、2009年に退職した元霞が関キャリアだ。退職後は、株式会社政策工房を設立し、現在は政策コンサルティング業を営んでいる。
なぜタクシーの初乗り運賃はどの会社も同じ金額なのか、また薬のネット販売が“解禁”されたにもかかわらず、多くの薬が今もネットで買えないのはなぜなのか……。こうした日常の中に潜む「役人の掟=規制」について、なぜそうした規制が作られ、守られているかを多角的な視点から分析したのが、同書である。
今回、発売されたばかりの新刊本が日銀幹部に万引きされたことを知った原氏は、「基本的にはコメントしようがないのですが……」と困惑した上で、こう答えた。
「週刊文春には『役人批判本』とありましたが、その認識は間違いで、この本は日本経済にとって最大の課題である『岩盤規制』を農業・医療・教育など、全21テーマにわたって解説した本です。その意味で、日銀幹部の方も含め、今後の経済政策に関心のある方、新たなビジネスチャンスを探っている方々に、是非とも手にとっていただき、レジに持っていって買っていただけたらと思います」