中国政府は今年11月に北京郊外で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の一連の会議に合わせて、微少粒子状物質(PM2.5)などの大気汚染を防ぐため、河北省内の2386企業の生産をストップさせるとともに、2445件の工場の建設工事も中断させた。また、北京市政府は11月7日から12日までを休日にしており、市民らにこの期間中は北京を離れるように勧めている。
これだけ大規模な企業の操業停止や大型連休は極めて異例で、市民の間では「まるで体の良い所払いのようで、庶民をバカにしている」との声も出ている。
河北省は中国のなかでも鉄鋼の一大生産地で、その煤煙がPM2.5の大きな原因となっている。このため、北京市中心部から100キロ圏内にある河北省の工場などが操業停止となった。
このほか、工業生産が盛んな天津市や、石炭が主力産業である山西省、内モンゴル自治区、山東省でも工場に空気清浄機を設置する措置を通達したほか、APEC開催中は生産量を減らすよう指導している。
北京市では10月19日に北京マラソンが開催されたものの、この日の大気汚染は世界保健機関(WHO)が定める汚染の許容量の16倍に達し、多くのランナーが参加を取りやめたほか、マスクや防毒マスクをかけて参加したランナーも多数みられ、北京のPM2.5の深刻さにあらためて関心が集まった。
このため、北京市でも11月3日から12日まで、市内に進入できる自動車のナンバーの末尾の数字を決め、他の車輌を入らせないようにする排気ガス対策を実施している。また、市内245カ所の主要道路、約3000件の建築物の清掃などのクリーン大作戦を近く展開する。北京紙「新京報」が報じた。これだけ大きな美化キャンペーンは2008年8月の北京五輪以来6年ぶり。
さらに、11月7~12日の休日は、10月初めの国慶節(建国記念日)に続く大型連休となった。学校や企業などは休みとして、市内の旅行代理店に対しこの期間のパッケージ旅行の割引を働き掛けている。
とはいえ、「環境対策のため、市民を追い出すのは本末転倒だ。いつも、APEC期間中のように、市民のために、環境対策を講じるべきだ。その場しのぎで、根本的な解決になっていない」との書き込みがインターネット上でみられている。