20m、6m、4mの距離感を体得するために、巻き尺などを使って実際の距離を測りながら全力疾走。ほかに、抱きつかれた時の対策として、地面にお尻をつけて手脚を3分間バタバタさせて暴れたり、大声を出したりする練習も行う。こうした疑似体験によって、「いざという時に、できるかな?」と感じることも、子どもの防犯意識や警戒本能を顕在化する可能性がある。そのため、親子で「後ろからギュッとしても、逃げられるかな?」など、実際にやってみることも有効だ。
防犯グッズについては、この4月にもドコモから腕時計型の軽量新機種「ドコッチ」が発売されるなど、新しいサービスも増えている。そうしたツールを効果的に使うためには、機械が壊れていないか、充電などができているか、定期的にチェックすることも大切。また、犯罪者は真っ先に防犯ブザーやバッグを捨てるケースもあるため、予備のGPSシステムを服のポケット深くに潜ませておくことも、防犯につながる可能性がある。
「友達が不審者にからまれているのを見て、自分の防犯ベルの紐を引いて投げつけ、難を逃れたという例もあります。また、『イマドコサーチ』などGPSを用いた居場所確認サービスの機能を使えば、塾の行き帰りなど子どもが一定の時間に、いるべき場所にいるかどうかを簡単にチェックすることができます。ただし、『今日はいつもより帰りが遅かったけど、何をしていたの?』など、普段の会話を通じて、子どもの安全を守るという意識も、絶やさないようにしましょう」(清永さん)
子どもたち自身が怪しい人を判別できるようにするのも、トレーニングの1つだ。
「怪しい人の5つの特徴を示した『はちみつじまん』という標語があります。『は』なしかけてくる、理由なく『ち』かづく、あなたを『み』つめる、『つ』いてくる、あなたを『じ』っと『ま』っている。こういう人に会ったら、『ん?』と注意する。
それで『怪しい』と判断したら、間違ってもいいから、防犯グッズのひもを引くようにと伝えます。親が、『もし間違ったら、一緒に謝るから』と言っておくことで、子どもたちに防犯グッズを使う上での心構えができます」(清永さん)
大人の行動や心がけ次第で、防犯に繋がることもある。そのひとつが、避難場所となりそうなコンビニ、商店などを子どもと一緒に、下見しておくこと。
「通学路にお店や『子ども110番の家』があっても、『いざという時に、飛び込んでいいのかわからない』という子どももいます。保護者が『何かあったら、ここに入って“助けてください”と言っていいんだよ』と保証すれば、子どもは安心して利用することができます。また、通学路にあるコンビニや商店、友達の家など、避難場所として機能しそうな先に、挨拶しておくことも大切です」(清永さん)
さらに犯罪者の心理を利用した、ちょっとした行動で、犯行を未然に防ぐこともできる。
「犯行を計画する者は、ターゲットとする子どもが何曜日の何時に、どの道を誰と通るかなど、入念に下調べをすることも多いのです。もし、自分の生活圏内で怪しい人を見かけたら、遠くからじっと見て、さらに通り過ぎてから振り返って“二度見”する。それだけで、犯罪者は不安になり、9割は犯行を思いとどまるというデータもあります。一瞬のさりげない行動が、地域社会の安全を守るボランティア活動になりますよ」(清永さん)