ヨーロッパはいま、行き場を失っている。欧州外交は意気投合していない。ロシアへの制裁を科し、お互いの問題解決を先延ばしにしたまま、ヨーロッパ各国が爆撃を続ければ、「イスラム国」はさらに暴走していくだろう。欧米、特にヨーロッパは、対外政策の泥沼化から抜け出せないでいるのが現状なのだ。
はっきり言っておこう。日本は、この問題に手を差し伸べてはならない。なぜアメリカの脛をかじっていかねばならないのか、私には理解できないが、日本は独立国家として進むべきだろう。
現時点で重要なのは、対症療法的に「イスラム国」を攻撃することではない。中東、つまりシリアとイラクの安定を見据えて各国が慎重に行動していかなければ、過激派によるテロは止まないということ。
「イスラム国」にとって、カリフ制(※注)の実現は、「終着点」ではなく、「聖戦の出発点」であるということを肝に銘じておくべきだ。
※注/カリフはアラビア語で「後継者」を意味する。「イスラム国」の指導者・バグダディは、ムハンマドの後継者=全イスラム教徒の最高指導者を宣言した。
●ロレッタ・ナポレオーニ/1955年ローマ生まれ。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で国際関係と経済学の修士号取得。北欧諸国政府の対テロリズムのコンサルタントを務める。「イスラム国」については早くから注目し、歴史上初めてテロリストが国家をつくることに成功するかもしれない、と発言していた。主な著書に『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』。
●取材/宮下洋一
※SAPIO2015年2月号