約2年ぶりに行方不明だった中学生少女が東京・中野区で保護された。埼玉県朝霞市で寺内樺風容疑者(23才)に引き起こされたこの事件。容疑者は誘拐当時、少女のフルネームを呼ぶなど用意周到な準備をしていたことが明らかになった。自宅の玄関前に置かれていた傘に書かれた名前から、フルネームを把握していたのだという。巧妙な誘い出しを避けるには、普段からの実践シミュレーションが効果的だ。
子供の安全対策を調査研究するステップ総合研究所所長の清水奈穂さんはこう話す。
「今回のようにフルネームで呼ばれたり、『家族が事故だ』と言われても絶対に誘いに乗らず、『家に帰って確かめます』『母親に聞いてみます』と必ずワンクッション置くこと。責任感が強い子や気が弱い子は、道案内を頼まれたら断れません。道を教えること自体はいいのですが、『連れていって』『車に乗って案内して』と言われて、一緒に歩いたり車に乗るのはNG。
『それはできません』『ごめんなさい、行けません』とキッパリ断れば、相手も“この子はしっかりしている”と手を引く。こうした言葉はとっさに出ないので、普段から練習させることが大切です」
誘いを拒んだのにしつこく腕をつかまれるケースもあるので、事前に訓練しておきたい。
「腕をつかまれたら、その手を無理に離そうとして自分のほうに引っ張るのではなく、左右に腕を振ると手が取れやすくなります。それがダメなら、地面にお尻をつけて座り込んで、相手のすねを蹴る“じたばた”をする。これらは普段から遊びの中で学ばせるべきです。
『つかまえた~』と子供の腕をつかみ、その腕をぶんぶんと左右に振らせたり、“じたばた”を練習させる。車や室内に入れられると逃げるのが難しくなるので、その前に抵抗して逃げることが何より大切。最後は相手の手に噛みついてでも逃げるよう、普段から教えておきましょう」(清水さん、以下「」内同)
「ウチは防犯グッズを持たせているから安心!」と思っている人も要注意。ステップ総合研究所が2010年に、小学4年生から中学2年生までの1890人に調査した中で、被害にあった児童のうち、緊急時に声を出せる子は10%、防犯ブザーを鳴らせる子はわずか2%だった。しかも、何もできなかった子が20%を占めた。
「ランドセルの横などに防犯ブザーを付けていると、いざという時に手が届かず、使えないケースが多い。防犯ブザーはすぐに鳴らせるよう、腰の位置に設置しておくことが大切です。『使うタイミングがわからなかった』という声も多いですが、緊急時は勘違いでもいいからためらわず使うことが大切。電池切れで使えないことも意外と多いので要注意です」
防犯グッズを過信せず、まずは緊急時に大声を出す訓練をしておきたい。
「何かあったときは『ギャー!』でも『ウー!』でもいいから大声を出せるようにしておく。実際、大声でわめいたので周囲の人間が気づき、誘拐未遂に終わったケースも多い。公園などで大きな声を出す訓練をしておきましょう」
“誘拐は起こる”と想定して、備えることが何より重要だ。
※女性セブン2016年4月21日号