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英国首相にEU残留説得する力なし 欧州はテロと犯罪の巣窟に

ヨーロッパはテロの巣窟に Abaca/AFLO

 移民を受け入れ、事実上の国境をなくし、事実上の大きな国家となっていたEUが崩壊の危機を迎えている。いきなり大挙してやってきた難民の受け入れに苦慮し、テロに振り回され、いったんなくした国境を復活させつつある。なぜ、このような事態に陥ったのか、ジャーナリストの落合信彦氏が解説する。

 * * *
 総人口5億人超の“一つの国”が音を立てて崩れようとしている。この6月、イギリスで「EUに留まるか、離脱するか」を問う国民投票が行われる。首相のキャメロンは国民に対して「EU残留」を呼びかけてきたが、それに対し、一気に逆風が吹き始めている。

“税金逃れ”のための取引が多数記された「パナマ文書」に、キャメロンの亡き父の名前が出てきたからだ。キャメロンは父親が設立したファンドに自らも投資し、利益をあげていたことを認めた。

 キャメロンはこれまで合法の租税回避も批判してきた。それなのに、自分だけ懐を温め、国民には緊縮財政を強いてきたのだから、怒りの声が渦巻くのも当然だ。もはやキャメロンには、イギリス国民にEU残留のメリットを説得するだけの力はない。離脱派の声が大きくなるだろう。

 それどころか、イギリス国民はわずか30kmほどのドーバー海峡を隔てた、ヨーロッパ大陸で起きている現実に慄然としているのではないか。

 EUは、イギリスの国民投票を待たずして、その存続が問われる危機的状況に陥っている。ベルギーの首都・ブリュッセルで3月22日に起きた爆弾テロは、30名以上の死者を出し、日本人を含む300人以上が重軽傷を負った。

 ベルギーは人口1100万人。国土はわずか3万1000キロ平方メートル足らずと、九州より狭い小国だ。その首都ブリュッセルにEUの政策執行機関である欧州委員会やEU理事会事務局、さらにはNATO(北大西洋条約機構)の本部が置かれたのは、まだテロリズムの暗い影がヨーロッパを覆っていない頃のことだった。

 しかしその後、ヨーロッパにはアフリカや中東などから多くの移民が流れ込み、テロの土壌が生まれた。昨年11月にフランス・パリで発生し130人が犠牲になった同時多発テロの犯人グループにも、モロッコ系移民の2世が含まれていた。

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