今や日本人女性の12人に1人がかかるといわれている乳がん。国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター副室長の坂本はと恵さんのもとには、乳がんを告知されて間もない人から悩みが寄せられる。
その多くは、「夫はパンツの場所もわからない。あと1週間で入院だが、何を教えればいいのか」「子供の保育園にはどう言えばいいのか」といったもの。坂本さんは「当院での平均的な入院期間は約2週間です。まずは、その期間を乗り切る、という目標で考えるとよいでしょう」とアドバイスする。
「最低限、着替えの場所とごみの日を伝えて、ご飯は一時的にコンビニ弁当ですませてもらう。“妻や母としての役割を果たせていない”“家族に申し訳ない”とおっしゃるかたも多いですが、治療がひと段落したら、元の生活に戻れるようにしましょうと伝えて気持ちに折り合いをつけてもらうようにしています」
それでも、幼い子供の送り迎えや親の介護など、どうしても手に負えないときは外部のサービスを利用しよう。
「子供の場合は学童保育を利用したり、市区町村が運営するファミリー・サポート・センターを活用しましょう。親御さんが病気の場合に利用できる延長保育もあります。親御さんの介護をしている場合は介護保険サービスを活用しましょう」
子供がいる場合、病気のことをどう伝えたらいいのか悩む人も多い。元プロレスラーで昨年9月に乳がんを告白した北斗晶の場合は、当時16才と12才だった息子に、すべてを話したというが、何才くらいから伝えればいいのだろうか。
坂本さんは「決まりはないが、ある程度の年齢になったら話したほうがいい」と言う。
「目安としては10才くらいでしょうか。急に母親がだるそうにしたり、抱っこしてくれなくなったりすると、自分のせいだと思って距離を感じることもあります。子供に説明するときは専用の冊子やプログラムがあるので、利用するといいですね。また、病気による制約だけを伝えるのでなく、“こういうことを協力してほしいからよろしくね”と役割を与えてあげることも大事です」
いざ治療をはじめると気になるのはお金のこと。手術も治療も決して安くはない。さらに仕事や日常生活に復帰するまでを想定すると、命の問題とは別に定期的な出費に悩まされることになる。もしもの時に、あわてないために今あなたが知っておくべきことがある。
※女性セブン2016年5月12・19日号