岩瀬:そういう時代になるのはいつごろですか。
落合:10年か15年後くらいだと思います。人工知能との会話が「多くの消費者の信頼を得る」までには時間がかかりますが、人工知能自体は数年で劇的に進化するでしょう。
たとえばフェイスブック社が開発して大きな話題となっている「メッセンジャーbot」というサービスは、ユーザーの好みや行動パターンを勝手に学習して、ピザ好きな人にはピザ店から「これはいかがですか?」とメッセージが届いたりする仕組みです。
これが進化すれば、人が何かを食べたいと心の中で考えているときに、行動パターンなどからコンピュータがドンピシャのタイミングでその商品を提示できるようになるはずです。人生設計のパターンなども把握できるので、生命保険の相談も個別にできるでしょう。
岩瀬:ネット上で働く仮想営業職員をつくってしまうわけですね。お客様とのやりとりや、保険提案のパターンはどうやってbotに学習させるのですか?
落合:社内で蓄積したデータをコンピュータにひたすら「食べさせる」のです。コールセンターの営業職員と顧客とのやり取りの録音データをすべてテキスト化して人工知能プログラムに入れれば、どんな家族形態の人にはどんな保険がお勧めかとか、よくある質問とそれに対する答えも覚えられます。必要なデータ量は、10万件以上が目安とされています。それくらい「食べさせ」れば、かなり優秀な営業職員になるはずです。
岩瀬:それが実現すれば、生命保険業界に限らずあらゆるビジネスが劇的に変わりますね。
※SAPIO2016年7月号