「酒が好きなのがここに通う理由の第一だけどね。先生みたいな社長(祐司さん)に会えるのも大きな魅力なんだよ。この人、難読漢字が好きでねえ。儚(はかな)くとか嗾(そそのか)すとか二進も三進も(にっちもさっちも)とか、私らが読めない言葉やことわざをいろいろ書きだしては壁や衝立に貼りだして解説してくれる。
他にも例えば国宝に指定されている城は5つあるというようなことを、歴史話を絡めながら話してくれるしさ。楽しい授業で、ずいぶん勉強させてもらってます。そう、言ってみればここは角打ち寺子屋なんだよね」(土木関係)
そんな大人の寺子屋で授業の合間に飲まれている人気の酒が、焼酎ハイボールだ。
「辛口で飲みごたえのあるのが最大の長所だと思うね。淡々と飲む人でも、ぐいっと飲む人でも、みんなうまそうな顔をするもん。社長に教えてもらう話や顔なじみとの世間話をつまみにしながら飲んでるうちに、じわじわとやってくる酔い心地が快感なんだよ」(60代、建築業)
ずいぶん前から酒を断っている祐司さん、元々酒が飲めない順子夫人、営業時間中は絶対に酒を口にしない康裕さん。
「それなのに、毎日酔っぱらいの私らを、嬉しそうにそしてしっかりと面倒見てくれるからねえ。特に出身が熊本城の目の前だっていうお母さん(順子さん)は、故郷を気にかけ、私ら酔っぱらいも気にかけ、頑張っているんだもん。ありがたいねえ。だからこっちは安心してまた酔っぱらえるってわけよ」(前出・建具職人)
「いつもの顔が来てくれるのがうれしいですよ。最近は、初めてなんですけどと言いながら一人で飲みに来る女性の姿も増えて、これがまた楽しいことです。
雰囲気として、角打ち人気の波は上昇しているように感じられるので、そういうお客さんたちのためにも、角打ちはずっと続けていきますよ」(康裕さん)