この1年、日本経済は長らく乱高下を続けたが、ついに上昇気流に乗った──。11月25日の日経平均株価は1万8381円。7営業日続けての上昇で約10か月半ぶりの高値となった。
米国大統領選でトランプ氏がサプライズ勝利をした直後は、世界経済への影響について不安材料が多かったが、その後、株価は上昇基調を続けている。その理由を、武者リサーチ代表の武者陵司氏は、「米国の景気回復への期待が強まっているからだ」という。
「暴言や移民問題ばかりがクローズアップされているが、トランプ氏の経済政策は荒唐無稽ではない。『インフラ設備投資による財政支出拡大』『減税による景気刺激』『規制緩和』という“トランプ版・3本の矢”は米国経済や世界経済にプラスに働くものばかりだ。市場もそれを好感し、株高基調が続いている」
加えて12月の米国利上げ観測が高まったことを最近の株価上昇の理由にあげるのは経済アナリストの森永卓郎氏だ。
「米国経済が好調で12月に米連邦準備制度理事会(FRB)は今年初の金利引き上げに踏み切る可能性が高い。利上げによって日米の金利差が広がってドル高になり円安の圧力が強まるため、日本経済への好影響が期待される」
トランポノミクスと利上げ観測による円安が日経平均を押し上げているとの見立ては多くの識者に共通する。マーケットバンク代表の岡山憲史氏は、日本株市場はトランポノミクスが日本の金融政策にも好影響を与えると期待している側面があるという。
「トランプ氏の影響で、日本国内でもさらなるインフラ投資、減税などの景気対策が実行される機運が高まっている。日米同時の景気浮上が現実味を帯びてきたことが、上昇の要因です」
その一方で、「楽観はできない」との声も聞こえる。経済評論家の豊島逸夫氏も「今はまだハネムーン相場だ」と指摘する。
「現在は期待先行であり、今後トランプ氏による政権人事や経済政策の実態が明らかになれば、大幅な株価下落も考えられる」(豊島氏)
※週刊ポスト2016年12月9日号