近年、ネットで募集されていた“高額バイト”や“簡単なバイト”という甘言に踊らされ、犯罪行為に手を染めてしまう人が後を絶たない。「交通費も支払う」と言われて行ったら殺人犯に指示され、遺体を運ばされる、オレオレ詐欺事件の出し子、受け子をやらされるといった事例が相次いでいる。つい先日も、特殊詐欺事件の共犯者として40代の無職女性が逮捕され、女性の逮捕者が少ない犯罪なのに珍しいと受け取られていたが、犯罪に至った経緯が明らかになると、高額バイトと聞いてネットで知り合った人物の指示に従ったという事例だった。同じようにして、気軽にネットで得た募集に応じたがために、女子中学生ですら「出し子」として検挙された事例がある。
「金が欲しい」と漠然と思っていたところに「気軽に出来るバイトがある」と吹き込まれれば、誰だってやってみようという気持ちになるのかもしれない。しかし、その先にまさか、殺人事件や詐欺事件の共犯者、どころか実行犯となり正犯者になる危険性が潜んでいるとは、誰も想像できない。
当記事を読んでいる読者の中にも「少し考えればわかること」だとして、A君らを見下している人がいるかもしれないが、むしろ、そうした人々たちに向けて発信したいというのが、筆者の意図だ。渡辺さん家族も、確かに傍から見れば立派な一家であり、自他ともに「犯罪とは無縁」と認めるくらいの、いたって普通の暮らしぶりだったのだ。晴天の日に雷に打たれてしまうような衝撃、とでも言えばわかってもらえるだろうか…。
渡辺さんが言ったように、スマホの普及で、本来は縁がなかったはずの人が犯罪と繋がってしまうようになった。それは確かに犯罪者の父が語っていれば「お前が言うな」という風にも聞こえるかもしれない。だが、落とし穴は誰の周囲にも、見えない口を開けている。無関係だと思い気にせずにいられる我々こそが、今一度その危険性をしっかりと把握している必要があるのかもしれない。