もちろん、道州制はバラ色の未来ばかりではない。教育機関を含め、行政サービスや経済が効率化し、無駄が省かれていくということは、都市間の格差も広がることを意味する。これまで都道府県庁があった都市が行政の中心ではなくなり、県内第2都市だったところなどは、ますます重要性が失われてしまう。立命館大学特別任用教授(行政学・地方自治論)の村上弘氏は、住民基本台帳の人口移動報告などを調査し、道州制によって人口流出が加速する可能性を指摘している。
「現在、東北各県では減った人口の3~4割、九州では5割程度は宮城や福岡など域内にとどまっているが、残りは東京や大阪に流出している。これは非常に重要なデータで、東北州や九州州は、道州制で地域の力が強化されるより、県と県庁所在市の廃止による人口減で弱体化する可能性のほうが高い。地元に近く政策力を持つ府県を維持しつつ、九州、東北などの広域連合で協力支援するほうがよい」
道州制は地方再生の原動力になる可能性もあるが、よほど強い指導力と緻密な政策がなければ失敗するリスクも高い。少なくとも、まずは国会から地方議会まで、肥大化している政治利権を大リストラするところから手をつけなければ国民も納得しないだろう。菅首相にそのリーダーシップがとれるか注目したい。