新刊を上梓

20万部を突破

同業者が読んで「これはない」と思われないように

 殺人犯に名乗りを上げた知人の代理人を引き受けた麗子だが、学生時代に短期間だが亡くなった御曹司と付き合っていたこともあり、完全な第三者としてではなく事件に巻き込まれていく。

 ミステリーの探偵役は、その事件にかかりきりにならざるをえないが、弁護士は複数の案件を同時にこなすのが当たり前で、麗子みたいに大きな法律事務所に所属する弁護士が個人の案件を扱うこともあまりないらしい。

「なので、上司にブチ切れて休職することにして、個人的な関係で巻き込まれて引き受けることにしてるんです。同業者が読んで、『これはない』と思われないように、細かいところに気をつけています」

 本職の弁護士だから書けることがたくさんある一方で、本職だからこそ、いい加減に書けないこともあるのだ。

「小説の中でも『犬神家の一族』の犬神佐兵衛の遺言状について書いていますけど、あの遺言は有効か、っていうのは法律の教科書のコラムにも出てきます。今回の『元彼の遺言状』についても、ギリギリの線を攻めているので議論はあるところだと思うんですけど、『犬神家の一族』がアリならこれもOKでしょう、とは思っているので、文句は言わせません(笑い)」

 小学生のころから本が大好きで、ファンタジーやミステリー、冒険小説などを読んでいた。高校時代に夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んで「こういうものが書きたい」と思ったのが、作家をめざすきっかけだった。

「まっすぐ文学部に進めばよかったのかもしれませんが、作家になれるまで何年かかるかもわかりませんし、デビューした後も食べていけるかわからない。高校生なりに考えて、別に仕事を持って長期的にねらっていくしかないなと弁護士をめざしました。弁護士に憧れて、という気持ちではなく、国家資格を取れれば何かしら安定的な仕事があるだろう、と」

 はじめは法律事務所に勤めたが、忙しくて書く時間がまったく取れなかった。3回転職して、4社目で、会社の中の法務部に弁護士として所属することになり、ようやく、土・日の休みや有休を取って小説を書けるようになり、念願のデビューも果たした。

「非常に恵まれた職場環境で、楽しく働かせてもらっていました。無事にデビューもできて、作家業に軸足を移そうと1回、退職を申し出たんですけど、作家になっても売れないかもしれないから、売れなかったら戻っておいでって言っていただいて、3年間の休職という扱いにしていただいています」

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン