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東大の“不老不死”研究最前線 「老化細胞」を除去する方法を発見

東大医科学研究所での実験の様子

東大医科学研究所での実験の様子

 もし、老いることで子に迷惑がかかるのであれば、「老いない」ことはできないものか──まだ、夢物語に聞こえるかもしれないが、最高峰の機関で、着々と「不老」の研究が進んでいる。

 今年1月、東京大学医科学研究所などの研究チームが、臓器や血管などの機能を低下させる「老化細胞」を除去する方法を発見。マウスを使った動物実験で老化を防ぐ効果を確認したと米科学誌『サイエンス』で発表した。

 人間の体は約60兆個の細胞でできており、細胞分裂によって新しい細胞が作られて、体は成長・再生している。ところが、なかには細胞分裂が止まったまま生き残る細胞がある。これが「老化細胞」だ。

 老化細胞は加齢とともに蓄積され、動脈硬化や脂肪肝、腎障害など、臓器や組織の機能低下を引き起こす。

 研究を主導した東大医科学研究所(がん防御シグナル分野)の中西真教授が解説する。

「老化細胞を除去できれば様々な老化現象が改善されることがこれまでの研究でわかっていましたが、あらゆるタイプの老化細胞に効果がある薬剤を開発するのは困難でした。

 そうしたなかで今回、われわれの研究チームは、老化細胞の生存に必須となるのが『GLS1』という遺伝子であることを突き止めました。正常な細胞と老化細胞にそれぞれGLS1の働きを阻害する薬剤を添加したところ、老化細胞だけが死滅することが判明したのです」

高血圧、白内障、認知症も

 中西教授らの研究では、老齢のマウスに薬剤を投与したところ、様々な臓器や組織で老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善することが確認できたという。

「実験用のマウスで現われた老化改善効果を人間の年齢に換算すると、握力や免疫機能は60歳程度から30~40歳程度の状態に若返り、腎臓の糸球体硬化や肺の線維化、肝臓の細胞炎症なども改善されました」(中西教授)

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