副業容認も週休3日制も「絵に描いた餅」
人々の働き方も、コロナ禍をきっかけに大きく様変わりすると予想されている。
人々はテレワークを経験し、技術的には大半の仕事が自宅や外出先でもこなせることを学んだ。それによって時間的にも経済的にも多くのムダを省けることがわかってきた。組織の境界を越えてネットワークは無限に広がり、眠っていた潜在能力が発揮できる可能性も見えてきた。
しかし共同体のしばりが解けないかぎり、そうした恩恵を受けることはできない。
政府が推進しようとしている副業や選択的週休3日制、ワーケーションといった新しい取り組みもまた、社内の同調圧力が大きな障害になることは目にみえている。さらに男性の育児休業を促進するうえでも、それが重い足かせになるだろう。機械的平等と共同歩調にこだわる以上、制度はあっても「絵に描いた餅」になりかねないのだ。
そもそも多様な属性や価値観を持つ人たちが一緒に働き、それぞれの特性を生かすという「ダイバーシティ&インクルージョン」の理念そのものが、排他的な共同体意識とは相容れないことは明らかである。したがって本気で理念を浸透させようとするなら、共同体意識からくる過剰な同調圧力につぶされない仕組みをつくることが欠かせない。
そして何よりも私たち自身が、一方で同調圧力にうんざりしながら、他方で周囲に圧力をかけたり、その恩恵にあずかったりしている矛盾に気づかなければ何も変わらない。