千葉県のいすみ鉄道で今も運行されている旧国鉄型ディーゼルカー「キハ28」。[いすみ鉄道提供](時事通信フォト)

千葉県のいすみ鉄道で今も運行されている旧国鉄型ディーゼルカー「キハ28」。[いすみ鉄道提供](時事通信フォト)

長崎には鉄道友の会の支部がなく、保存と展示のノウハウがない

 一般的に、鉄道車両は博物館や公園といった場所で保存される。しかし、行政は積極的な姿勢を示していない。そのため、博物館や公園での保存・展示という話が出てこない。

「保存や展示する場所の確保は行政が所管するところですが、鉄道は行政が苦手な分野です。そのため、イベントや保存・展示などは鉄道ファンの団体に頼るところが大きい。以前に鉄道イベントを開こうとした際に調べてわかったのですが、長崎には鉄道友の会の支部がなかったのです。あくまで推測になりますが、長崎県や県内の市町村が鉄道関連の取り組みに消極的なのは、鉄道友の会の支部がないことが影響しているのかもしれません。行政が鉄道関連のイベントをやりたくてもノウハウがなく、頼れる団体もないわけですから」(前出・長崎県文化観光部文化財課の担当者)

 長崎県内には、鉄道友の会のほかにも鉄道ファンの団体はいくつかある。しかし、鉄道友の会のような全国組織ではない。少人数・小規模の団体では、行政から鉄道車両の保存・展示といった大きな相談を持ちかけづらい。

 博物館や公園ではなく、買い取った鉄道車両を私有地に保存・展示することだって考えられる。しかし、それでは県民やファンが集まる、メンテナンスのボランティアが定期的に通えるといった面で支障が出る。極論だが、人里から離れた山奥だったら保存・展示の意味がない。もろもろの条件を考慮すると、保存・展示する場所は交通アクセスのいい駅前や市街地が望ましい。

 とはいえ、先述したように長崎市・諫早市・大村市・佐世保市といった沿線自治体からキハ66形・67形を保存・展示しようという動きは見られない。

 そうした中、「福山さんの発言は確認していないので、町としての公式見解を出すことはできませんが……」と前置きしながらも、話をしてくれたのは東彼杵(ひがしそのぎ)町まちづくり課の担当者だ。

 東彼杵町はシーサイドライナーが走る大村線の沿線自治体のひとつで、海の見える駅として人気の高い千綿(ちわた)駅が所在する。

「千綿駅はレトロな駅舎が観光客から人気が高く、最近はインスタ映えスポットとしても注目されるようになりました。JR九州などもパンフレットやポスターで千綿駅の写真を使うなど大々的にPRしてくれています。2018年には開業90周年を迎え、千綿駅で記念出発式も開きました。その出発式のとき、ホームで待機していたのがキハ66形です」(前出・東彼杵町まちづくり課の担当者)

 しかも、東彼杵町は千綿駅を活性化させる取り組みとして、駅前にカフェをオープンしている。このカフェには、県外からも多くの人が訪れる。

「キハ66形・67形に限定した話ではありませんが、千綿駅に多くの観光客が来るようになったので、地域活性化の一環として駅前に車両を展示しようという話が以前に庁内で出たことはあります」(前出・東彼杵町まちづくり課の担当者)

 ほかの市と同様に東彼杵町にもJR九州から保存・展示の話は来ていないが、キハ66形・67形は東彼杵町民からも宝のような存在と認識されている。それだけに、千綿駅前は保存・展示の場所としては申し分ない。

 福山さんの発言によって、諦めかけていたキハ66形・67形を保存・展示する光明が見えてきた。とはいえ、キハ66形・67形は解体危機の寸前にあり、一刻の猶予もない。果たして、保存・展示を願う長崎県民・鉄道ファンの思いは届くのか?

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