(朝岡)「あの一帯はかつては多少の雪が降っても土石流が発生するような雨が降る土地じゃなかった。それが8年前の集中豪雨以来、大雨による被害が頻繁に出るようになってしまった」
(男性スタッフ)「気候が変わってきている!」
(女性スタッフ)「石音町は8年前に集落が土砂で埋まっていますよね?」
(朝岡)「ええ。それでも住民の方たちは被害に遭うたびに懸命に暮らしを立て直してきました。それが今回、同じ場所でまた大規模な土砂災害が起きてしまった。また日々の生活が奪われた」
(気象担当の記者)「これだけ災害が繰り返されるということは……」
(男性スタッフ)「もはや住めなくなっているとか……」
(気象担当の記者)「もう、その土地を離れるしかないってことか……」
この後の場面、朝岡は百音に聞きたくない話を聞かせてしまったと詫びながらも「考えなくちゃいけないんです。もっと……」と自戒するようにつぶやく。
百音は好意を寄せている医師の菅波光太郎(坂口健太郎)に朝岡とのやりとりを打ち明ける。菅波も朝岡に同調する姿勢で「土地を離れることについても致し方ない」とドライに話す。たびたび命に危険が及ぶような場所はもはやその生物にとって適した環境とは言えないからと「離れた方がいい」ときっぱり百音に伝える。だが、その考え方に頭では「正しい」と理解しながらもどこか「少し冷たい」と感じる百音だった。
百音自身は「3.11」後、高校卒業と同時に故郷の島を離れて内陸部で暮らし始め、その後で上京したことで罪悪感を持ち、割り切った考え方に悶々とした感じをもっていた。
住み慣れた土地を離れること。それは許されるのか。百音はずっと考えてきた。朝岡も、家業の漁師を継がず銀行員になった百音の父・耕治(内野聖陽)も……。ドラマに登場する人物はみな土地や人間たちへの愛着や離れることについて葛藤を繰り返す。愛着ある土地から「離れること」「離れないこと」はドラマ全体を貫くテーマになっている。