60~70%のワクチン接種で「集団免疫達成」の根拠
当初、新型コロナウイルス感染症に対する集団免疫は、国民全体の60~70%が接種を完了すれば達成できるのではないかと試算されていた。
感染症には、感染力を表す「基本再生産数」という概念がある。これは、ある感染症にかかった人が、その感染症の免疫を全く持たない集団に入ったときに、直接感染させる平均的な人数を表す。
たとえば、この値が1より大きいと、平均的に、1人の患者から1人よりも多くの人に感染するため、感染は拡大する。逆に、この値が1より小さいと、1人未満にしか感染しないので、感染はいずれ終息する。そして、ちょうど1ならば、拡大も終息もせず、その地域に風土病のように根付く。
新型コロナウイルス感染症の基本再生産数は、当初2~3とみられていた。仮に、基本再生産数が2.5だったとしよう。この場合、10人の感染者から2.5倍の25人に感染が拡大する。
もし、この25人のうち、15人以上がワクチン接種で免疫を持っていれば、感染するのは残りの10人以下に抑えられる。10人から10人以下に感染――徐々に感染させる人数が減っていけば、いずれ終息するはずだ。
25人のうち15人以上、つまり60%以上の人が接種により免疫をもっていれば、感染は終息する。このようにして、60~70%が集団免疫の達成に必要な接種割合とされてきた。