新築マンションが売り出される際、「1期」や「2次」といった期分けで部屋が販売されることがよくある。これは販売会社が一度に販売する戸数を絞り、完売しやすくするための戦略だが、その裏では消費者心理につけこむ“あざとい駆け引き”が行われている。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、マンション期分け販売の実態を明かす。
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日本人というのは、とりわけ同調圧力に弱い習性がある。「他の人がそうなので」というのが、何かを決めるときの強力な理由になる。裏を返せば「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ということでもある。
新築マンションの販売手法には、こういった日本人の精神的な脆弱性に付け込む小賢しいテクニックが様々に盛り込まれている。
販売情報を収集する「マンションオタク」
一例をあげよう。何とか無事に閉幕した東京五輪の選手村の建物の多くは、内装をすべて入れ替えて分譲マンション「晴海フラッグ」となる。販売総戸数は4145戸というから、相当に大規模である。
実は五輪開幕前の2019年の盛夏に「第1期」の販売が行われた。コロナ騒動が起こる前である。販売戸数は600戸だったが、この「第1期」の登録抽選での最高倍率は71倍だったと報道された。
今の東京には新築マンションの販売情報を逐一収集し、SNSやブログ等にあげるような人がおそらく数百人規模で存在する。彼らは情報をオタク的に収集しているので、その点ではプロ顔負けである。もちろん、選手村跡地マンションのような注目物件が販売されると、目を皿のようにして「お買い得住戸」を探すのである。つまり、条件の割には価格が安い住戸である。
販売側も意図的にそういう住戸を設定する。そこに人気が集まって高倍率の抽選となれば、メディアで報道されるからである。