アメカジブランドが乱立しすぎた
では、値段が安ければ売れるのかというと、そういうものでもありません。それは低価格ブランドの範疇に入るオールドネイビーやアメリカンイーグルの撤退が証明しています。安くても売れない物は売れないのです。
近年の米国カジュアルブランドの不振を見ていると、日本市場では「純然たるアメカジテイスト」は受け入れられにくくなっているのではないかと個人的には感じています。ましてや、アメカジを販売するブランドはすでに日本にたくさんあり、それ以上の数を必要としていない状況です。
昔でしたら、アメカジを買う店は「ライトオン」や「マックハウス」に代表されるジーンズ専門店で、各地方にはリージョナルチェーンが乱立していました。そして1990年代後半にGAPが日本に上陸し、2000年代にはユニクロが隆盛となりました。
ちょうど筆者が20~30代頃のことですが、当時の自分を振り返ってみても、アメカジ服を買う店は、ジーンズ専門店チェーン、GAP、ユニクロの3つあれば十分でした。もちろん、それら以外にも高価格なビンテージブランドやこだわりのブランドもありましたが、リーズナブルなアメカジ服を買う先には困らなかったのです。
そうなると、後発上陸したオールドネイビーやアメリカンイーグル、アバクロなどが伸びる余地はありません。国内のファッショントレンドも2010年以降、アメカジブームは下火になっていましたから、後発ブランドにとっては余計に厳しい状況だったといえます。
もっともアメリカンイーグルやオールドネイビーはメンズの品揃えがTシャツとトレーナー、ジーンズばかりと言った具合に単調さが目立っており、ユニクロやジーユーのバリエーションの豊富さに比べて大きく見劣りしていたことは否めません。
エディー・バウアーにも同様の目が向けられていたのでしょう。中には3Lとか4Lの“アメリカンサイズ”を好むおじさんなどにファンが多かったようですが、ユニクロの最終値下げ品を見てもXLばかりが残っている状況を見ると、ビッグサイズ愛好家の人口自体はそれほど多くないことが分かります。そのため、豊富なサイズ展開も売り上げ規模を拡大する原動力にはなり得なかったといえるでしょう。