国内

「ノーマスク」に憤る人たち 教室、オフィス、店舗、親族間でも

(共同通信社)

マスクをする人はまだまだ多い(共同通信社)

 長引く新型コロナとの闘いが、新しい局面を迎えようとしている。感染拡大初期にドラッグストアなどの店頭から消えた「マスク」の着用方針が、大幅に緩和されたのだ。しかし、2年以上続いたマスク生活は、日本人の心に、無用な差別意識まで生み出していた。

 関西のある公立高校で、1人の生徒が退学したのはつい最近のことだ。理由は、コロナ禍以降私たちの生活の“必需品”であるマスクだった。高校関係者が明かす。

「退学した生徒は、体質的にマスクがなじまなかった。高校側は“マスクが着用できないと、コロナの感染対策が徹底できない”という理由で教室から追い出し、別室で授業を受けさせました。そればかりか、学校幹部が全校生徒に向けて“高校生にもなって分別がつかない生徒がいる”と糾弾する始末で……。結局、いづらくなって自主退学を選びました」

 マスクを着用しない分、その生徒は念入りに感染対策を行っていたという。新型コロナが感染拡大を始めた当初、感染した人や、医療従事者に対する「コロナ差別」が大きな問題になった。最近は「ノーマスク差別」が広がっているという。

 政府は5月20日、マスク着用への新たな見解を発表した。屋内で会話をする場合や、まわりの人と2m以上離れられない場合は着用を推奨するが、屋外では周囲との距離が充分とれなくても、会話が少なければ必ずしもマスク着用の必要はないとした。また、未就学児には一律に着用は求めないという。これまでの姿勢を緩めた格好だ。ほんべつ循環器内科クリニック理事長の藤沢明徳氏が説明する。

「WHOは一昨年にすでにマスクの効果は限定的と発表しました。特に、自身の感染予防を目的にマスクをしてもほとんど効果はない。今回の政府見解は遅すぎるくらいです。むしろ徹底したマスク着用はマイナス面も大きい。肌荒れはもちろん、集中力の低下や目の疲れ、肩こり、酸素不足による頭痛などが挙げられます。この先の季節は熱中症への心配も増します」

 未就学児や小学生など成長段階では、素顔が見えないために表情を読み取る能力や想像力、社会性など人とのコミュニケーションが阻害されかねないという研究もある。欧米では、当然のように公共の場での「ノーマスク」が加速している。たとえばスポーツの観戦時でも、マスクをせずに歓声を上げる観客の姿が大半だ。

 一方、国内では、政府見解が発表された直後の週末でも、ほとんどの人が生真面目にマスクを着用していた。だが、さまざまな理由でマスクを着用しない、できない人も多い。そんな人たちに対し、社会の同調圧力が「ノーマスク差別」となって襲いかかっているのだ。

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