人間は皆、“業”を抱えている

押さえた演技のなかに宿る狂気 (c)テレビ東京

押さえた演技のなかに宿る狂気 (c)テレビ東京

 ところで復讐というと、どこかに“私はこんなに可哀想!”という、ある種の自己正当化が漂うのがチープなイメージだが、このドラマにはそれがない。ありていにいえば、「悲劇のヒロイン」感も全くない。あるのは、むしろ誰しもが“闇”を持っているものだという普遍性だ。

「生きていくと、いろんなことが起きますよね。さらに、生きていくということは、誰かしら他者と関わっていくということ。そのなかで、全ての人に対して“素”で生きられるわけはないんです。それぞれがそれぞれの、人には出せない部分、見せてはいけない部分を持っている。それが“業”であり、このドラマに出てくる登場人物が何かしら抱えているものでもあります」

 では、監督自身もなかなか本音を言わないタイプ? すると監督は、「心のバロメーターがあるとして、ギリまでは全然出せる。けど、絶対言わないこともこのぐらいありますね!」と、親指と人差し指で3センチほどの隙間を作って、いたずらっぽく笑う。

 ドラマでは、どこまでもとらえどころがないのに、ふと密の人間味が感じられることがあるが、もしかしたら、その3センチこそが密、もとい美月が本来持っている“人間”らしさ。かつ、密のターゲットとなる人たちが持つ後ろ暗い本性の部分だが、そこを密と陽史が薄く巧妙に剥ぎ取っていくことで、視聴者もスッキリする仕掛けになっている。

 監督曰く「エロあり、情緒あり、ミステリー要素もあり」。木曜日の深い時間だが、リアルタイムで、また是非SNSで“共犯”を楽しみたいドラマである。

■取材・文/吉河未布

ドラマ『復讐の未亡人』(テレビ東京)
2022年7月7日(水)深夜2時35分~スタート 
動画配信サービス「Paravi」全8話先行配信中
https://www.paravi.jp/title/86486
原作:黒澤R『復讐の未亡人』(双葉社「アクションコミックス」)
出演:松本若菜、桐山漣、淵上泰史、足立梨花/森永悠希、小西桜子、前川泰之、松尾諭/平岡祐太 ※「漣」のしんにょうの点はひとつ

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