増上寺の三門は今年で建立400年を迎え、11月27日まで内部が特別公開されている。それを記念して、三門にまつわる企画展『増上寺三解脱門展』を大殿地下1階の宝物展示室で同時開催。三門の歴史や文化的価値、楼上の御像などが紹介され、三門と増上寺周辺を描いた浮世絵も展示されている。

「昭和10年の『増上寺』はフランスのノエル・ヌエットによるもの。ペン画をもとにした新版画です。ヌエットはフランス語教師として日本に滞在しながら、東京を巡って時代の風景をスケッチしました。大正・昭和期の新版画の時代には日本を訪れた外国人が日本の風景を描くことも多く、研究が進んでいる分野です。

『東京風景 芝御霊屋』興昭院蔵

『東京風景 芝御霊屋』興昭院蔵

 織田一磨は東京の風景を20枚の連作に残し、名所や伝説的な土地にこだわらず自身が面白いと感じた場所を選びました。その中の1点、大正6(1917)年の『東京風景 芝御霊屋(しばおたまや)』は徳川三代将軍家光公の時代に建立された二代将軍秀忠公の正室・崇源院(お江)の霊廟前で鳩と戯れる若い僧侶たちを描いたもの。この霊廟はかつて増上寺南側(現在のザ・プリンスパークタワー東京)にありましたが戦禍で焼失した、今はなき増上寺の姿を映しています」

 増上寺の三門から大門(表門)へ進み、JR浜松町駅方面へ結ぶ大通りには江戸時代の芝の様子を伝える案内板も立てられ、現代の街並みにかつての賑わいを偲ぶことができる。浮世絵に描かれた江戸の風情を脳裏で重ねながら界隈を散歩してみるのもまた、味わい深い。

取材・文/渡部美也

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める。日本美術応援団団長。近著に日本美術応援団の団員・壇蜜と美術館の常設展を巡る『私を美術館に連れてって』(小学館刊)。

国指定重要文化財 三解脱門 建立400年記念特別公開
住所:東京都港区芝公園4-7-35 大本山増上寺 公開:11月27日まで 時間:10時~16時半(最終入場16時)※混雑状況により変動の可能性あり 休:火 料金(記念品付):一般1000円

増上寺 三解脱門展
会場:東京都港区芝公園4-7-35 大本山増上寺 大殿地下1階宝物展示室 会期:11月27日まで 開館:10時~16時 ※新型コロナウイルスの影響により時間短縮の可能性あり 休:火 料金:一般700円/徳川将軍家墓地との共通券料金:1000円

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