ライフ

駐留アメリカ人が撮った「占領期のニッポン」 公式写真には写らない戦後社会のリアル

銀座4丁目の三越百貨店前を歩く2人組の晴れ着の女性。国民服などの地味な服装の人々の中で、一際目立ったので、思わずシャッターを押したのだろう(1946年正月、撮影者不明)

 白黒写真をAIで着色する技術が広まりつつあるが、ここにある戦後日本の写真は全てカラーフィルムで撮影された。撮影したのは当時日本に駐留していたアメリカ人。彼らがカメラに収めた戦後日本の「本物の色」とは──。

遺品整理でオークションへ

 あまりに色鮮やかで、アジアのどこかの国で撮られた現代の写真のように見えるが、ここにあるのはすべて占領期の日本の写真である。この時代の白黒写真を見慣れた我々は、まるでモノトーンの世界が広がっていたかのように錯覚しているが、現実には人にも風景にも色があった。それを写し取ったのは当時日本に駐留していたアメリカ人である。

『占領期カラー写真を読む』(岩波新書)の共著者で、早稲田大学の佐藤洋一教授が写真の由来を解説する。

「アメリカでは当時すでにコダック社のスライド用カラーフィルムが普及していて、占領期に日本に来た軍人らが、プライベートで膨大な数の写真を撮っていました。そうした元軍人らが寿命を迎え、長年眠っていた写真が、遺品整理でオークションサイトで売られるようになったのです」

 戦中世代の遺品整理とネットオークションの普及が重なり、ネットに写真があふれ出てきたという。ここに掲載したフィルムは、同書の共著者、衣川太一氏(神戸映画資料館研究員)が個人で収集したものだ。

「占領期の日本の写真を買い始めたのは2009年頃で、1万4000枚ほど所有しています。必ずしも遺族が売っているとは限らず、ガレージセールで購入してネットで転売している人もけっこういる。占領期の日本の姿がわかる貴重な写真ですが、ネットで買えるようになったということは、逆に、散逸が始まっているということでもあるのです」

 衣川氏は、散逸を防ぎたいという思いもあって買い続けてきたが、以前は100枚単位のセット売りで1枚当たり数百円で落札できたのが、今はバラ売りされ、1枚1000円以上に跳ね上がっている。特に鉄道や軍用機が写ったものは、マニアが金に糸目をつけず入札するので、手が出せないという。

 相場が上がらないよう、収集していることはずっと隠し続けてきたが、もう手の打ちようがないので、所有写真を公開することにしたわけだ。

関連記事

トピックス

殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
常に全力笑顔の林家つる子
《抜擢で真打ち昇進》林家つる子、コロナ禍でYouTubeに挑戦し「揺るがない何かができた」 サービス精神旺盛な初代・林家三平一門の系譜
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン