そのほか、医療現場で行われている閉所恐怖症患者に対する心得にもヒントが隠されていた。
「脳梗塞などの診断に使われるMRI検査は、円筒状の狭い空間にじっと40分程度入らなければならないため、閉所恐怖症のかたには強い苦痛となります。そのため、われわれ医療者が心がけているのは、
【1】検査の説明は対面ではなく、横に並んで適度に視線を外して緊張感が緩和されるようにする。
【2】これまで何分くらいなら検査できたかという閉所恐怖症の程度を確認し、過去の経験から目標時間を設定しつつ、複数回に分割して行うこともできると伝えて不安感を緩和させる。
【3】検査中に怖くなったときは、患者からの合図ですぐに中止できることを約束し、手を挙げるなどの合図を決める。
【4】視覚的恐怖が強い人には『目をつぶる』、息苦しさを訴えやすい人には『正しい呼吸法ならば大丈夫』と勇気づける。
【5】できることから焦らずゆっくり進め、成功体験を積み上げていく。
というプロセス。少しでも不安を緩和するサポートをしています」
重要なのは、閉所恐怖症に限らず、恐怖症は「受診しなければ、よくなることもない」ということだ。
「放置することでパニック障害やうつ病などを併発し、治療も長期かつ複雑になるケースや、途中で治療を離脱して治るものも治らないでいるケースも見受けます。心療内科や精神科を受診することは決して恥ずかしいことではありませんが、もし抵抗がある人は、かかりつけの内科でも婦人科でも医師に少しでも相談してみることをおすすめします」
【プロフィール】
池袋さくらクリニック院長・倉田大輔さん/美容皮膚科・形成外科・アンチエイジングのほか、リゾート・トラベル外来を設置。予防接種や予防薬処方を含め、丁寧な診療が話題。
取材・文/辻本幸路
※女性セブン2023年6月8日号