ライフ

【2024年の将棋界展望】タイトル独占の藤井聡太八冠 充実度は“かつての羽生善治七冠超え”だが「将棋版キンシャサの奇跡」を期待する声も

昨年は、最年少で名人のタイトルを獲得するなどの活躍を見せた藤井八冠(左。右は渡辺九段/時事通信フォト)

昨年は、最年少で名人のタイトルを獲得するなどの活躍を見せた藤井八冠(左。右は渡辺九段/時事通信フォト)

 8大タイトル独占の偉業を成し遂げた藤井聡太八冠(21)。将棋連盟会長に就任した羽生善治(53)九段にもファンからの期待がかかるが──プロ棋士の先崎学九段と将棋に造詣が深い作家・芦沢央氏が語り合った。【前後編の後編。前編から読む

芦沢:タイトル独占によって、挑戦権争いで藤井先生を倒す必要はなくなりました。昨年、藤井先生と名人戦を戦った渡辺明九段(39)は、雑誌のインタビューで「いったん、藤井さんは視界から消えました」という趣旨のお話をされていたのですが「藤井対策は、とりあえず挑戦を決めた後で考えればよい」というある意味でシンプルな状況になったのでしょうか。

先崎:渡辺さんは正直な人ですし、実績も十分あり、藤井さんともかなり年齢が離れていますので「まあ、いいか」と素直な気持ちを語れるのかもしれない(笑)。将棋の世界では、上の人が若い人を負かすのは本当に大変なことですけれども、渡辺さんにはまだまだ藤井さんとタイトル戦を戦ってもらわないと。将棋ファンのためにもうひと肌、脱いでほしい。

芦沢:将棋連盟会長に就任された羽生先生も、ファンからの期待は大きいですね。

先崎:将棋界のシンボルですし、タイトル通算100期の大記録にも「あと1」と迫っているので、当然でしょう。

芦沢:昨年、羽生先生が藤井先生に挑戦した王将戦七番勝負の観戦記を担当させていただきました。屈指の人気を誇るお二人の対決で大変盛り上がったシリーズでした。

先崎:第一人者の羽生さんが、年齢差を言い訳にせず、正面からぶつかって熱戦を繰り広げた。スコア的にも藤井さんから2勝をあげて、実力を示しています。将棋ファンの応援も拮抗していて、世代交代を迫られていたモハメド・アリが年下のジョージ・フォアマンに勝ったボクシング界の伝説「キンシャサの奇跡」の将棋界版を期待する声は私の周りでも大きかったですよ。

芦沢:羽生先生が1996年に達成した七冠制覇と比較し、藤井先生の充実ぶりはどうですか。

先崎:羽生さんは七冠達成前にタイトル戦で何度か敗退していますが、藤井さんはここまで番勝負をすべて勝っています。盤上も盤外も洗練されたいまの将棋界にあって、半世紀以上、破られていない年度最高勝率の記録(中原誠十六世名人が1967年度に記録した8割5分5厘)まで塗り替えようとしている藤井さんの活躍は、羽生さんのさらに上を行く難度のように思いますね。

芦沢:羽生先生は会長職との兼任で、研究にあてるお時間があるのかどうか、心配になってしまいます。

関連記事

トピックス

なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン