薬剤師で銀座薬局代表の長澤育弘さんも解熱鎮痛剤の弊害についてこう話す。
「意外と知られていないのが、血圧が上がること。解熱鎮痛剤の中には、プロスタグランジンという痛みを伝える物質の合成を抑制することで痛みを抑えるものがあります。しかし、プロスタグランジンには血管拡張作用もあるので、これを抑えると血管が収縮し血圧が上がる。実際、解熱鎮痛剤をやめたら血圧が下がり、降圧剤をのまなくてよくなったという人もいるのです」
三上さんは「医薬品副作用被害救済制度」からも、解熱鎮痛剤の危険性は読み解けるという。
「医薬品副作用被害救済制度は、薬を適正に使用したにもかかわらず副作用によって健康被害が生じた場合に、医療費や障害年金などの救済給付を行う公的な制度です。この制度の対象になった薬の上位を占めているのが解熱鎮痛剤。救済制度の対象は入院以上です。適正に使用していても皮膚のただれなど重篤な副作用が出る薬です。市販薬は手に取りやすいですが、正しい服用が大切なのです」
風邪薬をのみ続けて人工透析に
咳止め、鼻水を抑える、熱を下げるなど症状に合わせて多様な種類がある風邪薬も、のみ続けているうちに手放せなくなってしまうケースがある。埼玉県で自営業を営むHさん(66才/女性)が話す。
「最初はちょっとした風邪の症状でのみ始めたのですが、風邪薬をのむとよく眠れることがわかった。年をとって寝つきが悪くなっていたものの、睡眠薬はなんとなく怖いなと思っていたので、咳や鼻水が治まるまでとのんでいるうちに、1日1回のむ習慣がついてしまいました」
意外かもしれないが、Hさんのように風邪薬を常用してしまう人は多い。
「置き薬を取り扱うメーカーさんの話で、大量に置いていた風邪薬がすぐになくなってしまうおばあちゃんがいたそうです。理由は“よく眠れるから”。よくよく話を聞くとそのかたはむくみに悩んでいたので、すぐに薬をやめてもらった。風邪薬に配合されている解熱鎮痛剤による腎障害でしたが、幸いにも症状はひどくなかったそうです。
一方で、1年半ほど風邪薬をのみ続けて腎臓を悪くし、最終的に人工透析が必要になってしまった人もいます」(三上さん)