2015年には、消費者庁による「一般医薬品による副作用が疑われる症例1225件(2009〜2013年度)のうち、15件が死亡に至った」と異例の注意喚起もあったが、昨年来、市販薬にはらむリスクが注目されるようになった理由のひとつに未成年者のオーバードーズ(OD)がある。
「ハイになる」ために中高生たちが咳止めや風邪薬、痛み止めなどの薬を過剰摂取し、重篤な意識障害や呼吸不全などを引き起こすケースが頻発。依存性、中毒性、副作用の深刻さが浮き彫りになった。
恐ろしいのは、自分自身が意図していなくてもすでに過剰摂取してしまっている可能性が多分にあるということだ。薬剤師の三上彰貴子さんが指摘する。
「病院で処方される薬は単剤が多いので成分の引き算・足し算がしやすいのですが、市販薬の場合は複数の成分が混ざっている。1日あたりの用法・用量は守っていても同じ薬を長期間にわたってのみ続けたり、複数の薬を同時にのむことで、結果的に過剰摂取になってしまうケースは珍しくありません」
年を重ねるごとに体の不調が増え、ひとつ、またひとつと普段から薬を常用している人は少なくないが、特に「花粉症のこの時期は要注意」だ。
「本来なら花粉症の薬と風邪薬を併用する場合でも、薬局にいる薬剤師や登録販売者に相談してほしい。漫然と薬をのんでしまうのは危険で、特に規定量を守らないのは大きな問題を引き起こす可能性があります」(三上さん)
「解熱鎮痛剤」で一生治らない腎障害
前出のKさんが語る。
「片頭痛は10代の頃からで、20〜30代は生理痛もひどく、痛み止めとはかれこれ20年以上のつきあいです。体調が悪いと、吐き気を感じることもありますが痛いよりはマシ。のんでいる頭痛薬は、だんだん作用が強いものになっているけど、のむ回数は減らせるので仕方ないかなと思っています」
頭痛がする、熱が出た、肩や腰に痛みがある、急な歯の痛み、生理痛など、解熱鎮痛剤はまさに“万能薬”として重宝されている。Kさんのように、“お守り”のように持ち歩いている人も少なくない。しかし、用法・用量を超えてのみ続ければ、その副作用はお守りどころか命を脅かすほど重篤なものになりかねない。
「解熱鎮痛剤には胃腸障害や嘔吐などの副作用があり、規定量や規定期間を守らず長期間のんでいれば、胃潰瘍のリスクだけでなく、肝障害や腎障害を起こす可能性も高まります。むくみを訴える人もいますが、むくみが出るということは腎臓に影響があるということ。腎障害は一度悪化すると改善しません。
特に懸念すべきはアスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどNSAIDs系(非ステロイド性抗炎症薬)の薬。長期連用で胃腸障害のリスクが極めて高くなります」(三上さん)