本明さんは令和の千利休? スニーカーブームのルーツに「茶道」
──2014年以降のスニーカーブームの前には、日本で始まった第一次スニーカーブームがあり、そのルーツには、戦国時代の「茶の湯」の思想と美学がある、という指摘に納得しました。一見結びつきにくいスニーカーと茶道ですが、実用的なモノに付加価値を見出し、火付け役やトレンドリーダーが価値付けをおこない、文化として育て、見せびらかす場所を用意する……などの共通点があります。茶道になぞらえることで、スニーカービジネスの理解と奥行きが広がります。
戦国時代、茶碗一個が、土地や国と同じくらいの価値をもつことになったわけですよね。もちろん、どんな茶碗でもいいわけではなくて、形状とか見た目に細かな約束事があって、それを千利休のような権威ある人が認めてこそ、価値をもったわけですが、スニーカーにも似たようなところがあって、ハイプスニーカーとそうでないものがある。
そういうわけで『宇宙兄弟』などをヒットさせた漫画編集者の佐渡島庸平さんとは、千利休が過去から異世界転生して、今度はスニーカーで儲けるっていう漫画をつくったら面白いんじゃないか、という話をしています。
──ただ、本明さんはスニーカービジネスからすでに離れています。2021年にアメリカの大手靴販売チェーン「フットロッカー」に約400億で事業を売却したことは、大きなニュースになりました。スニーカービジネスを手放した淋しさはないですか?
それはないです。僕はスニーカーが好きというより、商売が好きなんです。金儲けのプロセスを作るのが好きだし、商売を通して自分が成長していくことが楽しい。自分ではほとんどお金を使わないんですけど。