ビジネス

いまだに「高度経済成長時代の生き方」を続ける日本人の不幸

経済的な側面から見れば、人生のポートフォリオは、自ら働いてお金を稼ぐ「人的資本」と不動産や預貯金などの「金融資本」で構成されている。多くの日本人はマイホームを購入し、金融資本を不動産に一極集中させた極めてハイリスクなものとなっている。では、人的資本はどうか? 資産運用や人生設計についての多数の著書で知られる作家・橘玲氏が解説する。

* * *
一方の「人的資本」でもリスクの極大化が生じている。

大卒の日本人は、その大半がサラリーマンとして会社や官公庁に就職し、終身雇用の下、定年まで勤務する。しかしこれも投資の観点でいえば、自分が持っている「人的資本」を会社というひとつの銘柄に集中投資していることにほかならない。その企業が倒産したり、今回のように会社や工場ごと津波に流されてしまえば、たちまち人的資本はゼロになってしまう。

大卒で大手企業に入社し、定年まで勤めたときの総収入は約3億円といわれている(企業年金や社宅なども加えると5億円との試算もある)。それがすべて失われてしまうのだから、そのダメージは計りしれないものがある。

サラリーマンなら誰でも身に染みて知っているように、40代を過ぎて中間管理職にでもなれば、転職の可能性はほとんどなくなってしまう。倒産やリストラで職を失うと、あとは非正規の職場で働くか、そこでも雇ってもらえなければコンビニのレジ打ちか道路工事の交通整理くらいしか残っていない。

このように、多くの日本人は人的資本をひとつの会社に投資し、それと同時に金融資本を住宅ローンでレバレッジまでかけて、マイホームという不動産に投資してきた。リスクを嫌うといわれる日本人が、実は非常にハイリスクな人生のポートフォリオを組んでいるのだ。

もちろん、リスクが高い反面、うまくいったときのリターンも大きい。高度経済成長期に日本人が急速に豊かになれたのは、このポートフォリオから効率的に富が生み出されたからだ。大企業に就職すれば倒産の心配はなく、住宅価格も右肩上がりで上昇していた。

しかし、バブルが崩壊し日本経済が低成長時代に入ったことで経済環境は大きく変わってしまった。それでも多くの日本人は新しい人生設計を見つけることができず、古いポートフォリオを抱え込んだままでいる。そのリスクが、震災によってはじめて顕在化したのだ。

※マネーポスト2011年7月号

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン