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野田首相のお膝元グルメ 「幻の海苔」は首相並みにやわらかい

 あの有名人が好きな料理はどんなの? 地元で有名な食べ物は? 食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が語る「日本全国縁食の旅」。今回は野田佳彦・新総理のお膝元、千葉県船橋市の「幻の海苔」を紹介する。

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 就任早々、米、中、露、韓の首脳と電話会談し、被災地にも赴くなど、精力的に動き続ける野田佳彦総理大臣。単価1000円のカットサロンで髪を切り、吉野家やサイゼリヤなどで舌鼓を打つという。そんな庶民派宰相の“地元”は千葉県第4区、つまり千葉県第二の都市、船橋市――。「幻の海苔」とも言われる「三番瀬海苔」の産地でもある。

 「三番瀬(さんばんぜ)」とは、東京湾内の船橋市、市川市あたりの干潟の総称で、江戸前の魚介類など、豊富な水産資源を持つ東京湾きっての漁場だ。江戸時代、徳川家に魚介類を献上する御菜浦(おさいのうら)に指定されてから400年経った現在も、国内きっての海苔の産地となっている。それも希少な「支柱式」の海苔を生産する干潟だ。

 海苔の養殖方式には、大きく2種類ある。現在、全国的に主流となっているのは、海上に海苔が養殖される網を浮かべ、海中にいかりを下ろす「浮き流し式」。そしてもうひとつは、干潟など浅瀬に支柱を立て、その間に海苔網を張る「支柱式」だ。

 常に海水に浸かり続ける「浮き流し式」は耐水性が強くなる。一方、「支柱式」は干潮時には海から顔を出し、太陽のもとで乾かされることでうま味が濃縮されるという。だが、穏やかな潮流の浅瀬でなければ支柱は立てられない。全国的に沿岸工業地帯が造成され、海苔の養殖場は沖へと追いやられるなか「三番瀬」は支柱式の海苔が養殖される、もはや全国でも数少ない干潟なのだ。それだけに「三番瀬海苔」は値段も高く、最高級品になると一帖1500円以上。桐箱入り有明海苔の最上級品並かそれ以上の価格になる。

 流れがゆるやかな湾内で育てられた支柱式の海苔はうまみが増し、やわらかさも備え、口の中ではらりとほどける。一方、浮き流し式の海苔は、巻物など長時間水分にさらされてもしっかりとその形を保つことができる。

 三番瀬のお膝元、船橋から初めて誕生した総理大臣、野田佳彦。定評のある演説のうまさに、野党から「あそこまで腰が低いとやりづらい」と苦笑いされるほどのやわらかさ。育ちの異なる「浮き流し式」の海苔のように、しっかりとした内閣を保つことができるのか。

厚生労働省の方からタバコ――いや、キナ臭い香りが漂ってきたかと思ったら、新内閣発足からわずか9日目で、鉢呂吉雄経済産業大臣がその任を自らほどいてしまったが……。

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