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アルコール依存症と闘ったIKEA創業者 禁酒の決意の後に復活

世界には様々な「敗者復活」強者たちが存在し、その数だけ物語がある。彼らの知られざるエピソードを紐解くと、どん底からの復活がなぜ可能だったのかが見えてくる。

たとえば、セルフサービスによる家具販売を世界中に広めたIKEAの創業者、イングヴァル・カンプラード(85歳)の半生は、波瀾万丈そのものだ。

スウェーデン南部の農家に生まれたカンプラードは、幼いころから祖父母や近所の人、学校の友人を相手に物を売っては小遣いを稼いでいた。

わずか17歳で、日用品の通信販売を行なうイケアを起業。その後、兵役に服していた間ですら、夜は上官の許可を受けて一人でイケアの事業を継続していた。第2次世界大戦が終わると、本格的に家具の取り扱いを始めた。

そこから、展示場で実物を確かめてもらい、注文を受けて通信販売するというスタイルが始まる。通販の返品システムが確立していない当時は、購入者がカタログと実物を見比べて落胆する事例が珍しくなかったためで、この手法は大いに受けたという。青年期のカンプラードは、とにかく仕事一筋だった。

ところが、30代半ばにピンチが訪れる。当時、彼は白いポルシェで通勤し、羽目をはずして遊ぶことがあった。酒をよく飲み、結婚生活が破綻していたこともあってか、友人と朝からウイスキーを引っ掛けることが多かった。

実はその頃、家具販売で成功を収めたイケアに対して、既存の販売業者の攻撃が凄まじかった。地元の家具販売組合は家具メーカーに露骨な圧力をかけ、イケアとの取引をさせないようにしたのだ。

その重圧は想像以上に大きく、カンプラードは、いつの間にかアルコール依存に陥っていた。それは、飲まなければ両手が震えるほどで、日常生活にも支障を来しかねないほどだった。

しかし、カンプラードはここで折れなかった。かかりつけの医師に相談したところ、2~3週間の禁酒を年に3回は行なうように勧められた。ここで治さねば経営者として未来はなくなると判断したカンプラードは、医者の勧めよりも一段と厳しく、5週間の禁酒を年に3回行なう決意を固め、実行したという。

治療を続ける一方で、ビジネスでは攻めの姿勢を貫く。嫌がらせによりイケアに直接納品できないメーカーに対しては、全く別の名前の子会社を経由して納入させた。

それでも続く同業者の攻撃により、国内での家具の調達が困難になると、今度は東西冷戦期の“鉄のカーテン”の向こう側にあるポーランドで家具生産を始め、安く仕入れて売り上げを伸ばした。

カンプラードは後にこの当時を振り返り、「危機が活力を生んだんだ。そのために常に新しい解決を見出すことができた」と語っている。

現在、彼の作ったイケアストアは、40の国と地域に300店以上出店し、世界中の顧客から支持を得ている。

※SAPIO2011年12月7日号

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